また出てきた劉生装幀流用本「白樺叢書・里見弴集」 ― 2014/09/03 10:24
箱はあるのだが、この水に濡れた痛み本をつくづく眺めていて、どうもどこかで見たような既視感に囚われた。デジャ・ヴィ。
この本が出版された昭和16年、もうすでに劉生は亡くなられていた。この本を手に取るまで、偉大なる先生がいつ亡くなられたのか、知りもしなかったので、あまり大きな顔は出来ないが、この本を劉生装幀本として良いのだろうか。
ここで、また、「岸田劉生装幀画集」の登場。
白樺叢書の箱は雑誌『白樺 百号記念号』の表紙を流用していた。題簽はどなたのものか当該本には書いていないが、左肩の「100号」の部分を削り、右肩の絵柄を挿入。右横の巻数表示の代わりに「白樺叢書」と入れ、左横の発行年月を削り、収録作家名が入れたのである。
下部の雑誌の巻数その他、雑誌の発行にかかわる記述はレイアウト上で削除して、天地は絵柄ぎりぎりで裁ち落としであった。
ちなみに箱と本体の裏面のカーテンか緞帳めいたものから覗く窓の絵柄は同じで、記念号の裏面の流用。平は雑誌『白樺第十三年五月号』と同一、『十三年伍月号』という文字を削って空白にした、なんともバランスの悪いもの。先生が生きていたら、これは許さないのではないかな。
† 白樺叢書 里見弴集
里見 弴/著
岸田劉生/生前装幀流用(転用者不明)
河出書房●
●昭和16年5月15日発行●四六判・箱 448頁 2円80銭
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角川文庫「黄色い犬」のカバーに驚く。 ― 2014/09/11 19:09
「黄色い犬」はメグレ物シリーズの六作目。邦訳本の数で言うと、私の調べた限りではあるが、「男の首」の17に次いで多く、12ある。
ご覧頂いた通り、この角川文庫の初版のカバーは実にユニークで、面白い。初訳の黒白書房版のそれといい勝負である。
カバーを描いたのは「河内 紀」という方。あの古本関係の雑誌などに登場する方と同姓同名で、もしご当人とすると、この絵を23歳で描いたことになる。えらいものである。
† 黄色い犬
ジョルジュ・シムノン/著 ●中島 昭和/訳
河内 紀/装幀
角川文庫●
●昭和38年7月20日発行●文庫判・カバー 202頁 90円
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これも河内 紀さん。前回と全く違う? 『赤毛のレッドメーン家』。いかが ! ― 2014/09/15 07:38
発行は「黄色い犬」より前だが、同じ年の装幀作品である。とても同一人物の作品とは思えない。作品を読んでないので、このカバー絵が適切かどうかは判断のしょうもないが、奇妙奇天烈、この特異な絵に拍手したい。もっと別の文庫装幀を見てみたいものである。
† 赤毛のレッドメーン家
イーデン・フィルポッツ/著 ●赤 冬子/訳
河内 紀/装幀
角川文庫●
●昭和38年5月10日発行●文庫判・カバー 379頁160円
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桂ゆきの装幀本(2)これも『ある寓話』展に未出品 ― 2014/09/28 12:49
発行は昭和二十九年。こうしてスキャンしてみると、その頃の作者の画風とは違ってみえる。昨年(2013 年)の回顧展を思い出して、ちょっと戸惑うが、前の「女の兵舎」の流れで描いたのだろう。
どういうわけか昨年の現代美術館に並んでいなかった。偶然出会った本だか、かわじもとたか氏の労作『装丁家で探す本』を読んでいなかったら、買えなかった本だった。
† 女の中隊
ナンシー・モルガン/著 大庭さち子/訳
桂 ユキ子/装幀
鱒書房●
●昭和29年12月15日 4版発行●B6判(125×180ミリ) 317頁 定価奥付に未記載?
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