繊細な筆遣いが冴える、初山滋の「谷崎潤一郎」 ― 2014/05/13 13:20
絵本作家として著名な初山滋の装幀の本である。戦後すぐの粗末な小冊子にしてはヤケもなく、大事にされていたのだろう、本の状態は良い。
和紙の表紙に書き文字を巧く使っていて、絵本や挿絵とは違ったおもむきがある。このやさしい佇まいが実にいい。
著者の辰野隆は残念ながら、もう知る人もない仏文学者になってしまったが、装幀をした初山滋の人気は今でも衰えていない。ビジュアルな時代とはいえ、この出来映えで納得がいく。
† 谷崎潤一郎
辰野 隆/著
初山 滋/装幀
イヴニング・スター社●
●昭和22年10月12日発行●四六判 334頁 45円
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東君平のカバー「ローマ劇場毒殺事件」 ― 2013/08/28 14:01
私は永らく東君平氏を漫画家・イラストレーターだと思っていたが、ネットで検索してみたら、絵本作家として通っている方だった。
いつから先生がこのクイーンのシリーズのカバーを担当なさったかは定かではないが、角川文庫のクイーン物は一時期全部東君平氏のものであったと思う。このことは巷間あまり知られていないのだろうか。
私はそのうちの四、五冊ぐらいしかまだ見ていないのだが、この「ローマ劇場毒殺事件」が一番の傑作と思う。推理小説を暗示していながら、眺めていて、不思議と静かな気持になるカバーである。
† ローマ劇場毒殺事件
エラリー・クイーン/著 石川 年/訳
東 君平/カバー
角川文庫●
●昭和38年6月30日初版 昭和42年7月10日四版発行 カバー 267頁 160円
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装幀アットランダム(15)初山 滋の「マッチ売りの少女」 ― 2012/05/23 06:32
戦後、すぐの仕事としては、上出来の部類の出版であろう。
このシリーズ本の出版案内によると、東郷青児や河目悌二が関わった本もあるがまだ見たことがない。
こういう丁寧な仕事を見るのは何とも気持が良いものだ。
† 名作物語 アンデルセン マッチ売りの少女
鈴木三重吉/著
装幀・挿絵/初山 滋
光文社●少年文庫
●昭和23年4月25日発行●B6判 上製 177頁 80円
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装幀に屈託あり(14)模範家庭文庫 「こども聖書 旧約物語」 ― 2011/12/10 09:54
なんとも豪華な児童書である。これだけ贅を尽くした造本、装幀、は同時期に丸善から出版された「日本童話選集」と並ぶ企画内容だろう。
両二つのシリーズ本については、二十年前に開催された「子どもの本・1920年代」展の目録に詳しい。
この本いささか持つ手には重い。が、たくさんある本文や別刷りの初山滋の挿絵を眺める至福の時を過ごせるのだから。冨山房に感謝である。
†こども聖書 旧約物語
中村星湖/編・著
初山 滋/装幀・挿絵
(口絵1点、別刷挿絵16点、本文カット絵121点)
●楠山正雄/企画・編集
冨山房●模範家庭文庫全二十四巻の内22巻目
●昭和7年12月25日発行●菊判(152×221ミリ)上製 箱・521頁 2円80銭
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◎「子どもの本・1920年代」展の目録ヤフーで処分します/ ↓http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g85558179
装幀に屈託あり(12)サンリオ 「カタツムリの笛」 ― 2011/11/25 10:27
薄奈々美という人はなんと幸せな人であろう。蓼食う虫も好き好きということだろうが、寺山修司がぞっこん惚れ込んでしまった画家さんらしい。
この絵だが、はっきり言って、私にはどこがいいのかさっぱり分からない。もちろん好みの問題もあると思うが…。彼が存命なら聞いてみたいところである。
この人の絵本はあまり見かけない。寡作で出版される本もそんなに多くはないのだろう、まして寺山との共作、貴重な絵本であるのは確かだ。何とか自分に無理強いして納得した。
† カタツムリの笛
寺山修司/文&タイトル文字 薄 奈々美/絵 中島かほる/デザイン
株式会社サンリオ●1979年5月25日 初版 発行
●A5判・頁数 記載なし(扉・奥付共に64頁あり) 880円
カバー●本体表紙ボール紙装にもカバーと同じ絵あり
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