モダンで洒落た近藤浩一路の装幀『異国膝栗毛』2015/03/05 18:03

近藤浩一路/装幀&挿絵

岡本一平や小川芋銭の陰に隠れて、ちょっと忘れられた感じがしてならないのが、この人「近藤浩一路」だと思う。この自著の装幀の素晴らしさにはびっくり、ほかにも装幀本はないかと思った。

しかし、「近藤浩一路の全貌」展の図録を取り寄せて調べても、この本以外に装幀した本はないらしく、期待は見事に外れた。もっと装幀の仕事をしてもらいたかった先生である。

箱の画家仲間の似顔絵もうまいし、余程この本に入れ込んだのか、挿入された挿絵とカットが生半可の数ではない。ザッと数えて、1ページ台の挿絵が105点、見開きにごとに一、二点載る感じのカットが240点はあった。達者な絵描きさんだからお手のものだろうが、生半可な数ではない。正直驚いた。


† 異國膝栗毛(現代ユウモア全集第九巻)


 近藤浩一路/著  

 近藤浩一路/装幀&挿絵

 現代ユウモア全集刊行会(小学館・集英社内)●

 昭和3年12月20日初版発行●B6判 526頁 予約本のためか価格未記載  


↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


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東君平のカバー「ローマ劇場毒殺事件」2013/08/28 14:01

東 君平/カバー(装幀)

私は永らく東君平氏を漫画家・イラストレーターだと思っていたが、ネットで検索してみたら、絵本作家として通っている方だった。

いつから先生がこのクイーンのシリーズのカバーを担当なさったかは定かではないが、角川文庫のクイーン物は一時期全部東君平氏のものであったと思う。このことは巷間あまり知られていないのだろうか。

私はそのうちの四、五冊ぐらいしかまだ見ていないのだが、この「ローマ劇場毒殺事件」が一番の傑作と思う。推理小説を暗示していながら、眺めていて、不思議と静かな気持になるカバーである。


† ローマ劇場毒殺事件


 エラリー・クイーン/著 石川 年/訳

 東 君平/カバー

 角川文庫●

 ●昭和38年6月30日初版 昭和42年7月10日四版発行  カバー 267頁 160円  


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こんな装幀本があった! 保積稲天の『命のばし』2013/08/08 12:34

保積稲天&長崎抜天/装幀

保積稲天。戦前三天と称され活躍した漫画家の一人である。寡聞にして私はこの方を存じあげなかったが、漫画ばかりでなくこのユーモア全集に掲載されるような文章も書いていた。

二人集の相方、長崎抜天さん。私の世代ではNHKの看板番組、もちろんラジオだが、『とんち教室』の回答者として知られた方である。

裏表紙には稲天というサインが入っているから、箱絵は抜天さんの仕事だろう。このシリーズ本、まだ全巻は見たことないが、見た数冊の装幀は箱絵、表紙の挿画は全部違っていて、この最終巻の意匠は箱絵・表紙とも一番良かった(見た限り)。


† 命のばし 稲天抜天集


 保積稲天&長崎抜天/著

 保積稲天&長崎抜天/装幀・挿画 

 現代ユウモア全集第24巻●小学館・集英社内 現代ユウモア全集刊行会●

 ●昭和5年5月30日発行●B6判 布装 箱 448頁 予約出版か定価は無記載

装幀作者不詳本(4)柳瀬正夢だったか「ホワイト・ファング」2012/05/16 11:04

表紙と扉(右)/柳瀬正夢

この翻訳本には装幀者名の記載はない。扉、表、裏表紙のどこにも サインや装幀者を窺えるマークなどもない。

たまたま「装丁家で探す本」という本を図書館で見つけ、柳瀬正夢の作品と分かった。

このかわじもとたか氏の労作は古書目録などが出典らしいので、正確を期すため正夢の展覧会目録を閲覧することにした。

すると、1986年に朝日新聞が開催した展覧会(大正アバンギャルドの旗手 柳瀬正夢展 その知られざる青春)の年譜に記載があった。しかし、現物は出品されなかったらしく目録に書影は載っていない。

ほかの展覧会目録にはその記載もないものがあったり、書影が載ってない場合もあり多少不安であるが、一応正夢装幀としておく。


† ホワイト・ファング


 ジャック・ロンドン/著 堺 利彦/訳

 装幀/柳瀬正夢

 叢文閣●

 ●大正14年10月21日初版発行●四六判(130×190)ミリ 349頁 1円60銭


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装幀アットランダム(14)昭和の絵師、「上村一夫」がいた2012/05/11 07:43

装幀/上村一夫

若くして上村一夫がなくなって何年経っただろう。この本を雑書の山から見つけて、しばし、物思いにふけった。

『同棲時代』、昭和も遠くになりにけり。

人気作家であったから、自著の表紙絵はたくさん描いているが、装幀の仕事は寡聞にして、これ以外に知らない。

唐十郎の自叙伝ということで、かなり気が入った仕事である。


† わが青春浮浪伝


 唐十郎/著 付・対談/赤瀬川源平&若松孝二

 装幀/上村一夫

 講談社●

 ●昭和48年4月28日発行●四六判 並製カバー 265頁●480円