村山知義の仕事(3)自装本『志村夏江・初恋』2015/11/11 16:46

村山知義/装幀

こんな本があったのだ。

作者の長い演劇活動や、美術活動を紹介する展覧会の図録などでは、見たことのない。珍しい本だと思う。

戦後すぐの出版だから、貧弱な体裁は「仕方がない」が、裏表紙にかけて、工場街を描いた作者の絵には魅了された。ご紹介のためにスキャンした。如何でしょう。


† 志村夏江・初恋(村山知義戯曲選集 第一巻)


 村山 知義/著  

 村山知義/装幀

 檜書房●

 昭和21年10月15日初版発行●四六判 185頁 15円  


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何とも贅沢な三者揃い踏みの本。喜司山治『維新前夜』 !2015/02/22 16:33

伊藤喜朔/装幀

障子を開けたら、目の前は広がる海。そこに見えるのは黒船。幕末の舞台装置が一幅の絵になっている。作者はキサチャンと伊藤のことを愛称で呼んでいたらしいが、伊藤喜朔の友情厚い仕事なのであろう。

『維新前夜』は全六巻で、私はこの巻を含めて三冊しか、そのカバーの装幀を見ていない。その中ではこの装幀が一番気に入ったのだが。

まだ見ていない二、五、六巻も是非見たいが、カバー付で国会とか、どこかの図書館に納まっているとは全く考えられないので。儚い望みである。


† 維新前夜 第三巻


 喜司山治/著  

 伊藤喜朔/装幀☆藤森成吉/題簽☆玉井徳太郎/ 挿絵&口絵

 春陽堂書店●

 昭和17年5月18日初版発行●四六判 本文288頁+あとがき1頁 1円80銭  


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衣裳デザインの挿画が圧巻、花柳章太郎「きもの」2014/01/16 11:19

装幀・構成/花柳 章太郎

私の狭い体験なので、断定は出来ないが、最近の古本市の古書の状態の悪さが目立ったきた。古書の値下がりが関係しているのだろうか。

そんな印象の中で、珍しく美本に出会えた。花柳章太郎の自装本「きもの」である。有名なイラストレーターも装幀本の傑作と言っているそうだが、手に取って実際に見ることが出来て納得できた。

箱もあまり擦れてなく、元パラフィンがついていたせいか、本体の背も焼けていなかった。出版から七十年以上たった本とはとても思えない良い状態なので、迷わず購入した。


† きもの


 花柳 章太郎/著 装幀・構成/著者自身

 箱張/鏑木清方 表紙/苅谷鷺行 見返し/鏑木清方 扉/小村雪岱 三色版(装画)/伊東深水   題字/川口松太郎

 二見書房●

 ●昭和16年11月10日発行●B6判・箱 313頁 3円


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荻須高徳の装幀本(2)マルセル・パニョル『マリウス』2013/10/20 08:26

荻須高徳/装幀

雄鶏社のパニョルが手に入った。マルセーユ三部作の第一作である。ホルスト・ブッフホルツとレスリー・キャロンの主演で映画化された。その昔、私は新宿の今はなき京王名画座で観た。あの海の青さが強烈に印象を残した恋物語だった。

その原作の戦後版の表紙をOGUISSがやっていたとは知らなかった。戦前のフジタの装幀のほうがマルセーユぽい路地裏が描かれていて、またいいのだが、この版も港全景を描いていて、捨てがたい。


† マリウス


 マルセル・パニョル/著 永戸俊雄/訳

 荻須高徳/装幀

 雄鶏社●

 ●昭和23年4月5日発行●B6判 275頁 100円


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装幀に屈託あり(30)若き日の吉田謙吉の仕事2013/02/28 09:42

吉田謙吉/装幀

この本を買ったのはかの吉田先生の装幀本だったからである。八十年以上も前の戯曲集で、内容は興味津々、時間があったら読みたいがまだ読んでない。

背と裏表紙まで一続きの絵になっている構成で、この頃の画風はとぼけた元祖ヘタウマ派のおもむきがあって面白い。

以前、吉田謙吉の最高のクラスの仕事であると紹介した火野葦平の『小説欧羅巴』に比肩し得る仕事と思う。


† 飛ぶ唄


 金子洋文/著 吉田謙吉/装幀

 平凡社●昭和4年12月10日発行

 ●四六判・箱はあるはずだが、欠 412頁 1円30銭