川村清雄、鏤刻の装幀、「洗心録」2014/10/06 11:37

川村清雄/装幀

前にご紹介した『洗心広録』の元版。この「大正名著文庫」版は表紙の図像を浮き彫りにする押し型印刷で、当時としては非常に斬新な技術である。装幀者の真骨頂といったところか。

大正時代の貸本屋の蔵印があり、娯楽本や漫画しか並んでいなかった戦後の貸本屋と大いに違う。当時の読書事情が伺えて面白い。

何とかレリーフが分かるようにスキャン出来た。

このレリーフがある装幀本、私は初めて見た。カバーがあったらしいが、既刊の川村清雄の図録などには掲載されていなかったので、貴重な資料だろう。


† 洗心録


 幸田露伴/著  

 川村清雄/装幀

 至誠堂書店●大正名著文庫(8)

 大正3年7月18日初版●大正5年4月1日19版発行●四六判 238頁 1円20銭  


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原弘の装幀本。アメリカに原爆が墜ちる戯曲? これって上演されたの?2014/10/09 08:27

原 弘/装幀

大東亜戦争前に、日本でも大いに流行ったアプトン・シンクレアの戦後の珍本です。デトロイトやシカゴで原子雲が……といったニュースがラジオから流れてくるお話なんです。

かの吉田健一がいち早くジョージ・オーエルの『1984年』を引き合いに出して、翻訳出版の翌年、毎日新聞が出していた『毎日情報』で紹介をしています。

こんな驚くべき本の装幀をかの原弘先生がやっていたとは知りませんでした。それよりこんな本を買っていたなんて、知らなかったなあ。本当にびっくりしました。本の整理はたまにはするもんです。


† 世界の末日


 アプトン・シンクレア/著●並河 亮/訳 

 原 弘/装幀

 中央公論社●

 ●昭和25年8月5日発行●B6判 139頁 140円

 総司令部許可番号 073・07-307●  


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たまたま見つけた桂ゆきの装幀本、「炎の女」伊藤野枝伝2014/10/20 12:15

桂ユキ子/カバー装幀

 最近は古書展には行っても、書棚を眺めて帰ってくるだけだが、たまには発見があるものだ。本自体は初出本ではなく、別の出版社の後版だが、うれしいことに、この版元の装幀を桂ゆき先生だった。この本も昨年の現代美術館の「ある寓話」展にはなかったので、早速スキャンしてみた。


† 「炎の女」 伊藤野枝伝


 岩崎呉夫/著  

 桂ユキ子/カバー装幀

 自由国民社●

 1970年6月15日初版発行●新書判 297頁 420円  


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ザルテンの本で美しい馬を描いていた藤田嗣治2014/10/26 18:48

藤田嗣治/装幀

 『白馬物語』、箱入りの動物文学の名作が目に止まった。作者ザルテンはかの”バンビ”の原作者だなあと思ながら、本体を箱から取り出すと、美しい馬が現れた。表紙から裏表紙まで、一頭、白馬が横から描かれている、一瞬、フジタの筆致が思い浮かんだ。確かめると、ちゃんと装幀者として、フジタの名があった。すぐ買った。

 惚れ惚れするほど実にいい絵なのだが、以前に参考にした林洋子先生も、その労作『藤田嗣治 本のしごと』で、この本は紹介していなかったし、一瞬研究者をなじりたくはなってが、まあ神田の「青空」で出会うまで、私も知らなかったのだから文句は言えない。

 そんなに珍しい本かと、「日本の古本屋」検索したら、数冊売られていた。ご丁寧にフジタの装幀本と書き添えてあるものもあり、別に特別高価ではない。本の状態にさえ、こだわらなければ、いつでも、誰でも買える本だが、まあ、こんな美本はなかなかないよと、一瞬パソコンの前で負け惜しみ。


† 白馬物語


 フェリックス・ザルテン/著  秦 一郎/訳  

 藤田嗣治/装幀 牧野虎雄/題簽

 東京堂●

 昭和18年4月15日初版発行●四六判 421頁 2円80銭  


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