荻須高徳の装幀本、丹羽文雄『中年』2013/06/04 07:05

荻須高徳/装幀

古本市でこの本を手に取るまで、OGUISSが文学叢書の表紙や箱絵を描いていたとは知らなかった。

戦後の「パリ画信」など自著のカバーに作品は提供しているが、日米開戦前、先生がパリからやむなく帰って来た翌年に出た本にどんな縁があったのだろう。

「中年」とは何とも面白みのないタイトルだが、戦後、文壇のボス的存在になった大御所の書き下ろしだという。オギスの珍しい仕事なので、箱の表、背、裏の三面をつなげて一枚の絵にしてみた。

この本の奥付裏の広告によると、この叢書は全九巻書き下ろしの予定だった。作家に川端、横光、尾崎の名前があるが、全巻ちゃんとで出版されたのだろうか。どうもこの一冊だけだったようだ。

(後で分かったことだが、この本発禁本だった、それで後続の発行が途絶したのだろう。ふしだらな婚外関係の記述にあったというバカバカしい理由だから笑ってしまう。2014/1/5)


† 中年


 丹羽文雄/著

 荻須高徳/装幀

 新文学叢書●河出書房

 ●昭和16年7月31日発行●B6判・箱 239頁 1円60銭


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福沢一郎の仕事(2) 創元社「現代詩講座」の装幀2013/06/13 11:00

福澤一郎/装幀

このシリーズ本は戦後、教養書ブームの先駆けの出版と思う。この渋さがいい。というか、この落ち着きは今見ると安心をする。

偶然、即売会でこの箱付を見つけ購入できた。本体だけの裸本は持っていたが、カバーか箱があるとは想像していたが箱であった。

本体同様多少シュールぽいが、卓上に詩集が置かれた書斎の静かな佇まいを思わせて出色、鑑賞に値する。


† 現代詩講座3「詩の鑑賞」


 金子光晴 草野心平 三好達治 村野四郎 小野十三郎/その他著

 福澤一郎/装幀・カット

 創元社●現代詩講座・全四巻

 ●昭和25年6月30日発行●B6判・箱 293頁 200円  


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駒井哲郎の仕事(4)福永武彦『冥府・深淵』の装幀2013/06/16 11:02

駒井哲郎/装幀

駒井哲郎ブックワークに再録された先生のエッセイを読んでいたら、戦後最初の装幀の仕事がこのミリオン・ブックスの「深淵」ではなかったかとの記述があった。

ところが、ブックワークにはその書影はないし、後ろの年譜にもそんな事実は見当たらない。その年譜によると、昭和29年3月に渡仏、この本の初版が出る前年にパリを発ち、マルセーユより帰国の途に、12月に横浜港に着いているので、留学後の最初の仕事に違いはなさそう。

こうなれば、現物を見て確認するしかないので、友人の近代文学の蒐集家に問い合わせると、当該本を所持しているというので、拝借して確認、その書影と書誌情報を得ることが出来た。

ちなみに、本人が語っているそのエッセイの初出は講談社の『現代の文学(7)福永武彦』の月報となっていたが、その確認はまだ出来ていない(図書館でこのシリーズの月報合本と取り寄せて確認出来ました)。


† 冥府・深淵


 福永武彦/著

 駒井哲郎/装幀

 大日本雄弁会講談社●ミリオン・ブックス

 ●昭和31年3月25日初版●新書判 212頁 130円  


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古澤岩美が装幀・挿画、ホフマン『夜の伽藍』2013/06/29 16:17

古澤岩美/装幀&挿画

古澤岩美の昔の図録を買った。1971年に日動画廊でやった彼の代表作展の時のものだが、それまでの集大成とおもむきがあり、彼の溌剌とした生気の漲った絵に圧倒された。

その時一緒に購入したのが、ホフマンのこれ。戦後すぐの粗末な本だが、これまで、あんまり岩美先生の装幀に出会うことがなかったので、この妖気ただよう画面に居すくまれ、ついつい悪いくせで買ってしまった。

図録の年譜によると1948年の戦後第一回のモダンアート展に岩美先生も作品を出していた。「憑曲」という作品で、あくまで印刷上のことだが、晩年のステレオタイプ化した裸婦像よりずっといい物だった。


† 夜の伽藍


 ホフマン/著 石川道雄/訳

 古澤岩美/装幀&挿画

 鎌倉書房●

 ●昭和23年9月20日発行●B6判 236頁 130円


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