こんな文庫・あんなカバー(18)意外と新鮮、串田孫一先生の『歴史学入門』2012/09/03 10:07

串田孫一/カバー装幀

串田孫一は一口で言うと、随筆家なのだろうか。失礼ながら、先生のご著書は読んだ覚えはないが、その装幀はしばしば拝見して、感心させられている。

これも小品ながら、ほのぼのとして雰囲気の中にも品格があって、こうした学術的入門書にふさわしい出来映えだと思う。

昔の河出文庫。もう古いもので、どこでもあまり見かけなくなったので、埋もれるには惜しい作品なので、取り上げてみた。


† 歴史学入門 河出文庫特装版 


 増田四郎/著 串田孫一/カバー装幀

 河出書房 昭和30年2月25日 初版 ●同年8月1日六版発行

 A6判(105×148ミリ) 243頁 80円

こんな装幀家がいた(一)内間安(王星)あんせい2012/09/09 10:11

装幀/内間安(王星)あんせい

ジェームズ・ケインの名作、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は翻訳者の多い本である。

私の知り得た範囲ではあるし、ミステリ分野に限るが、シムノンの「男の首」の次ぐらいではないか。

この「飯島正」を筆頭に、出版順にいうと、蕗沢忠枝、田中西二郎、田中小実昌、中田耕治の五人、錚々たる顔ぶれである。

因みに「男の首」は八人の訳者がいる。戦前の永戸俊雄に始まり、宮崎嶺雄、堀口大學、三好 格、宗 左近、石川 湧、木村庄三郎、矢野浩三郎の諸氏が続く。まあ、日本で一番売れたシムノンの本であろう。


† 郵便配達はいつもベルを二度鳴らす


 ジェームズ・ケイン/著 飯島 正/訳

 装幀/内間安(王星)あんせい

        ↑王偏に旁が星の字がない

 荒地出版社●

 ●1953年5月20日初版発行●B6判(128×182ミリ) 171頁 200円


↓角川文庫の翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/

東郷青児の装幀本(1)新潮社長篇文庫『孤独なる女』2012/09/16 17:05

東郷青児/挿画

この「長篇文庫」というシリーズ企画は装幀のフォーマットが一様でないので、画面構成、タイトル文字まで、挿画を担当した画家に任されたいたようである。

すべて珍本の部類。この本の奥付あとの既刊目録には12点掲載されているが、確か20点ぐらいは出たのではないか、私はこの本しかまだ直に手にとったことがない。

フランスから戻り、一躍人気者になった後、しばらく翻訳など文筆にかまけていた時代の仕事で、青児調はまだしもながら、いい出来と思う。


† 孤独なる女


 吉田絃二郎/著

 東郷青児/挿画

 新潮社●長篇文庫

 ●昭和5年9月17日発行●120×180ミリ 並製 321頁 50銭

装幀アットランダム(18)テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」2012/09/22 10:48

装幀/吉原 治良

テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」初訳本である。ブロードウェイで大当たりをとり、映画化されたこともあり、後にこの本は新潮文庫になった(現在あるのは小田島先生の新訳)。

版元はつぶれる前の創元社で、まだ、ミステリなど出していない大阪にあったころの出版で、昔日感無量である。

永らく探していて、お目にかかれなかった本。手に入れて、またビックリした。

装幀はかの「カルバドスの唇」の吉原治良。ちょっとゴチャゴチャして、装幀としてはどうかという画面だが、もの珍しいさも手伝って取りあげることにした。


† 欲望という名の電車


 テネシー・ウィリアムズ/著 田島 博&山下 修/共訳

 装幀/吉原 治良

 創元社●

 ●1952年10月10日発行●B6判 上製カバー 320頁 300円