装幀に屈託あり(28)シムノン「自由酒場」の装幀者は? ― 2012/02/15 10:20
シムノンの『自由酒場』である。
原題は「Liberty Bar」という作品で、この翻訳書の前に別の出版社から本書と同じ伊東鋭太郎訳で出ているが、あれから七十年以上経った今日まで、日本語訳はこの訳者のものしかない。
以前、といっても、昭和三十年に遡るが、モダンミステリの一冊として、曽根元吉訳の新刊予告がされていたが刊行はされてない。
この戦前に出た本だが、例のごとく装幀者の記述のない一冊。しかし、「おんな」や「ひと」の顔がいくつも描かれていて、どうもどこがで見たような仮面的造形とも思えた。
それは誰あろう、かって二科会を率いて活躍した東郷青児である。 先生の画集を調べると、戦前、パリから戻ったころの描いた『椅子』という作品の女の顔に酷似していた。
それに箱の裏の大きな丸。これは東郷青児が好んで、装幀に使ったデザインを髣髴させる。以上、顔と丸で、もしかしたら東郷青児ではないかと、勝手に推定?
† 自由酒場(付 倫敦から来た男)
ジョルジュ・シメノン(シムノン)/著 伊東鋭太郎/訳
装幀/東郷青児(推定)
アドア社●
●昭和11年11月9日発行●四六判 上製箱 364頁 1円80銭
最近のコメント