装幀に屈託あり(20)表紙が藤田嗣治のデッサン「もんぱるの」 ― 2012/01/03 08:48
以前、藤田嗣治先生の悪口を言ったので、名誉回復で再登場してもらう。ジャック・ベッケル監督の名作「モンパルナスの灯」の原作本である。
モジリアニの生涯ばかりでなく、当時のパリの画壇の状況が垣間見える内容で、読んでも面白い。
戦後も別の出版社からベッケルの映画公開に合わせて新訳が出たり、後年、その改訳が講談社文庫なった名作なので、ご紹介した。
ちなみに表紙の「嗣治」署名のデッサン風の彩色画はこの本でしか私はまだ見たことがない、集英社の「藤田嗣治 本のしごと」にもその記述がなかった。三十部出たという限定版に一度見て見たいものだ。(2013/11/21追記)
† 「もんぱるの」
ヂォルヂュ・ミシェル/原作 石井柏亭/序文 折田学/翻訳 モンパルノ/挿絵 藤田嗣治/表紙画
第三書院●昭和7年12月25日第1刷発行●昭和8年2月5日改訂版
●四六判・363頁 1円70銭 別刷モノクロ画15葉入り(モジリアニ他)●EXEMPLAIRE No.1221
●別に総皮装・クリーム色舶来上質紙刷 限定豪華版三十部刊行 頒価四円
† モンパルナスの灯—モジリアニ物語—
M・ジョルジュ=ミシェル/著 山崎剛太郎/訳
講談社文庫●昭和54年9月15日 第1刷発行
●文庫版(105×148ミリ)・282 360円
装幀アットランダム(1)佐々木 邦の「世間と人間」 ― 2012/01/08 07:24
オーこれはいいと自分が気に入った表紙やカバーでも、それを描いた作者がもう過去の人だったり、無名だったりして、とんと顧みられない本がある。そんな本の魅力溢れる装本、挿画を何回か紹介してみたい。
まずは池部均。俳優で文章も物した池部良の父上。書き文字といい。提灯の絵といい、構図といい、三拍子揃った表紙デザインのお手本である。
† 世間と人間
佐々木 邦/著 装幀/池部 均
白林書房●
●昭和18年12月15日初版発行●B6判変型(120×180ミリ)
211頁 2円15銭
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こんな文庫・あんなカバー(11)野間 宏『眞空地帯 上巻』 ― 2012/01/11 07:35
装幀アットランダム(2)大佛次郎の「帰 郷」 ― 2012/01/13 07:09
ひと目見て、この明るい踊るような画面に誘われて購入した。見たことのない画風だった。有り難いことにカバーの作者名があった。佐藤敬。
どこがで聞いたことはあったと調べると、もちろん画家であるが、声楽家の佐藤美子の旦那だった。今ではもう誰も知らない人だろう。
私もその一人で恥ずかしいが、いろいろパリ本をひっくり返してみたら、戦前パリ遊学をした縁で、柳亮の「巴里すうぶにいる」にも、彼が挿絵で登場していた。
ちなみにこの「巴里すうぶにいる」は豪勢な本で、藤田嗣治が巻頭口絵の著者の柳亮の肖像画を描き、そのほか十四名の画家が挿絵を寄せている。佐藤敬もそのうちの一人だった。
† 帰 郷
大佛次郎/著
装幀(カバー&扉絵)/佐藤 敬 挿絵/中西利雄(絶筆画あり)
六興出版社●
●昭和25年5月15日初版/昭和25年11月25日八版発行●B6判 カバー 本編446頁+あとがき4頁 220円
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装幀に屈託あり(21)日本兒童文庫 「日本童謡物語」他 ― 2012/01/16 08:34
アルスの日本兒童文庫二冊セット版である。
先生のお仕事としては特筆すべき装幀ではないが、例の『恩地孝四郎 装本の業』にはセット版の箱は掲載されていないので、本体の背とともにご紹介する。
また『装本の業』では、このシリーズを全70巻としているが、現実に76巻があるのだから、これは誤植であろう。訂正したい。
† 日本童謡物語
北原白秋/著 恩地孝四郎/装幀・口絵(1点)・挿画(10点)
アルス●日本兒童文庫 72巻(最終配本)
●昭和5年11月11日発行●四六判(127×188ミリ)上製・箱 246頁 非売品(資料によると2冊セットで1円)
† 世界工芸美術物語
山本 鼎/著 恩地孝四郎/装幀 石井了介&石井耕一郎/挿画
アルス●日本兒童文庫 76巻 (最終配本)
●昭和5年11月11日発行●四六判(127×188ミリ)上製・箱 240頁 非売品(資料によると2冊セットで1円)
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