装幀アットランダム(3)ヴァージニア・ウルフの「オーランド」 ― 2012/01/18 07:50
「地中海」という作品で芥川賞を戦前にもらっている作家さんの装幀本である。新訳がでるまで、ウルフのこの作品はこの翻訳しかなかったから、昔、清水の舞台から飛び降りて注文した。
送られてきた書籍小包を開封し、初めてこの本を見た時の驚きは忘れない。華やかな、トランプを素材にしたデザインが新鮮で、お主やるなぁとつい声をかけたくなる、実に美しい本であった。
† オーランド
ヴァージニア・ウルフ/著 織田正信/訳
装幀/冨澤 有爲男(とみざわ ういお)
春陽堂●
●昭和6年7月7日初版発行●B6判 カバー 350頁 1円80銭
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装幀に屈託あり(22)水品春樹の「築地小劇場史」 ― 2012/01/20 09:04
舞台美術家の伊藤熹朔の装幀の仕事である。
左が初版で、右が再版の表紙。ずいぶん時間が経った版元も違う再版だが、デザインコンセプトは初版を踏襲しているようだ。
たまたま、初版と再版が手元にあったので、並べてみると、再版のほうがすっきりまとまって、いいと思う。
挿入している資料の数やその他、初版の方が勝っている点もあるが、デザインだけに限ると再版をとりたい。
† 築地小劇場史・初版と再版
水品春樹/著
装幀/伊藤熹朔
初版・日日書房●
●昭和6年6月6日発行●B6判 上製 箱欠
本文344頁+写真口絵39頁+序と前書10頁+目次9頁 1円
再版・梧桐書院●
●昭和14年4月25日発行●B6判 上製 箱
本文344頁+写真口絵12頁+前書10頁+目次7頁 2円
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装幀に屈託あり(23)藤田嗣治の装幀? 「レスター先生の学校」 ― 2012/01/22 08:58
この本には装幀者の記載がない。「口絵・さしえ」として、有岡一郎の名前があるのみ。
前にこのブログで紹介した林先生の『藤田嗣治 本のしごと』の217頁に、これと全く同じ装幀の「ミシシッピー川の探検」が掲載されていた。
その時、フジタにしては画風がちょっと違うなと、ちょっと疑問に思った。
「ミシシッピー川の探検」には嗣治の名があったのだろうか。林先生が何を根拠に藤田嗣治の仕事としたかは分からないが、しかし、この版下が後年よその版元に流用されていたのが分かった。
それは次回に。
† レスター先生の学校
メアリ・ラム&チャールス・ラム/共著 西川正身/訳
有岡一郎/口絵・扉絵・挿絵
国立書院●
昭和22年10月5日発行
●B6判 178頁 60円
装幀に屈託あり(24)藤田嗣治の装幀の流用? 「シェイクスピア物語」 ― 2012/01/23 08:27
このカバーは前回掲載した「レスター先生の学校」と同じ版下を使っている。違いは、葉の色を変え、カバー全体を色ベタにして、なわとびの女の子のシルエットを白抜きにしているだけ。
本書には装幀・挿画として、向井潤吉の名前があり、藤田嗣治の名はどこにもない。
前掲の国立書院と刀江書院の関係が分からないし、どうして十年以上経って、版下が他社に流用されたのか。疑問、疑問である。
† シェイクスピア物語
平田禿木/著
向井潤吉/装幀・挿画
刀江書院●刀江児童選書
昭和34年1月1日発行
●B6判・上製カバー付 184頁 180円
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