パリの本(12)佐野繁次郎の画集か「巴里風物誌」は!2012/03/12 06:41

佐野繁次郎/カバー絵

 こんなに楽しい本はない。著者は大昔ではあるが、NHKの名物番組の常連出演者だった渡辺紳一郎。

 彼自らが語るように、文章によるパリ印象記でもあり、その名文に佐野繁次郎画伯のスケッチが六十点近くついた画集でもある。

 今風に言うと、二人の逸材のコラボレーションといったところか。とくに画伯が描いた彼流のパリ描写は秀逸。戦後パリを再訪できた喜びで溢れている。


† 巴里風物誌


   渡辺紳一郎/文●佐野繁次郎/本文・カット絵(表紙・装幀画)

   東峰書房●昭和30年11月5日 初版発行

   B6判(126×182ミリ)●226頁●280円

自著自装本(1)高峰秀子の「巴里ひとりある記」2012/02/25 18:03

装幀・挿絵/高峰秀子

一昨年なくなられた、デコちゃんこと高峰秀子の本がなぜかブームだ。新刊書店の平台に彼女の書いた本がたくさん並んで、壮観である。

私の世代だと、小学校で見に行った『二十四の瞳』のおなご先生、大石先生役が印象深い。

彼女の最初の本『巴里ひとりある記』は得意のスケッチ画をふんだんに鏤めた自装本である。

この本何しろ豪華である。口絵の肖像画を梅原龍三郎が描き、ポートレート写真を早田雄二が撮り、扉には仏文学の渡邊一夫の「セーヌのほとりにあたしはひとり」とのペン書きもあるのだ。

今、平台に積み上げられた新装版は、この自装本に比べると見劣りすることは否めない。そのすべてをお見せ出来ないのがいかにも残念である。


† 巴里ひとりある記


 高峰秀子/著

 装幀・挿絵/高峰秀子

 高峰秀子像/海老原龍三郎・画 ポートレイト/早田雄二・写

 扉・仏文/渡邊一夫・筆

 映画世界社●

 ●昭和28年2月28日発行●A5判変型(145×192ミリ) 箱・帯 183頁 340円


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装幀アットランダム(6)石川達三のカバー絵の本2012/01/30 08:05

カバー絵/石川達三

昔々『四十八歳の抵抗』で一世を風靡した、流行作家・石川達三がスケッチ画を描いていた。知らなかった。この本を買うまでは。

なかな達者なもので、脱帽。パリでの生活を共に過ごした友人、桶谷先生の本のため一肌脱いだらしい。厚き友情に感心。

桶谷繁雄といっても、彼もとうに昔の人だから、エッ! 誰?、って、聞き返されるのがオチだか、メグレ物の研究書を邦訳して下さったシムノンファンには有り難い先生である。

覚えておきなさい!


† 新しいパリ 新しいフランス


 桶谷繁雄/著

 カバー絵/石川達三

 文藝春秋新社●

 ●昭和27年10月20日発行●B6判 カバー 281頁 250円


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装幀に屈託あり(20)表紙が藤田嗣治のデッサン「もんぱるの」2012/01/03 08:48

藤田嗣治/表紙画

以前、藤田嗣治先生の悪口を言ったので、名誉回復で再登場してもらう。ジャック・ベッケル監督の名作「モンパルナスの灯」の原作本である。

モジリアニの生涯ばかりでなく、当時のパリの画壇の状況が垣間見える内容で、読んでも面白い。

戦後も別の出版社からベッケルの映画公開に合わせて新訳が出たり、後年、その改訳が講談社文庫なった名作なので、ご紹介した。

ちなみに表紙の「嗣治」署名のデッサン風の彩色画はこの本でしか私はまだ見たことがない、集英社の「藤田嗣治 本のしごと」にもその記述がなかった。三十部出たという限定版に一度見て見たいものだ。(2013/11/21追記)


† 「もんぱるの」


 ヂォルヂュ・ミシェル/原作 石井柏亭/序文 折田学/翻訳 モンパルノ/挿絵 藤田嗣治/表紙画

 第三書院●昭和7年12月25日第1刷発行●昭和8年2月5日改訂版

 ●四六判・363頁 1円70銭 別刷モノクロ画15葉入り(モジリアニ他)●EXEMPLAIRE No.1221

 ●別に総皮装・クリーム色舶来上質紙刷 限定豪華版三十部刊行 頒価四円


† モンパルナスの灯—モジリアニ物語—


 M・ジョルジュ=ミシェル/著 山崎剛太郎/訳

 講談社文庫●昭和54年9月15日 第1刷発行

 ●文庫版(105×148ミリ)・282 360円

装幀に屈託あり(16)装幀者不詳の 「モン・パリ変奏曲・カジノ」2011/12/20 10:37

モン・パリ変奏曲・カジノ

戦前ではちょっと手の込んだ装幀の本でも装幀者の分からないことがやたらとあって、困る。まったく本の意匠の著作権など頭になかったということなのだろうか。

春陽堂のこのシリーズは表紙と同じカバー付で、見返しや扉、目次、各ベージのノンブルのデザインも趣向があって面白いのだが、いったい誰のアートディレクションなのか、分からないのだ。

写真やイラストも数点あるのだが、やはり誰のものか書いていない。原書からの無断盗用なども平気で横行していたのだろうか。春陽堂さん、どういうことですか。


†モン・パリ変奏曲・カジノ


 フィリップ・スーポー、フランシス・ミオマンドル/著

 石川 湧・丹 京一郎/訳 装幀/不明

 春陽堂●世界大都会尖端ジャズ文学(4)

 ●昭和5年4月18日発行●四六判・326頁 1円50銭


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