こんな装幀本があった! 保積稲天の『命のばし』 ― 2013/08/08 12:34
保積稲天。戦前三天と称され活躍した漫画家の一人である。寡聞にして私はこの方を存じあげなかったが、漫画ばかりでなくこのユーモア全集に掲載されるような文章も書いていた。
二人集の相方、長崎抜天さん。私の世代ではNHKの看板番組、もちろんラジオだが、『とんち教室』の回答者として知られた方である。
裏表紙には稲天というサインが入っているから、箱絵は抜天さんの仕事だろう。このシリーズ本、まだ全巻は見たことないが、見た数冊の装幀は箱絵、表紙の挿画は全部違っていて、この最終巻の意匠は箱絵・表紙とも一番良かった(見た限り)。
† 命のばし 稲天抜天集
保積稲天&長崎抜天/著
保積稲天&長崎抜天/装幀・挿画
現代ユウモア全集第24巻●小学館・集英社内 現代ユウモア全集刊行会●
●昭和5年5月30日発行●B6判 布装 箱 448頁 予約出版か定価は無記載
清水三重三の装幀本、吉井勇『狂える戀』 ― 2013/08/13 09:56
吉井勇といったって、今じゃ、そうそうその本は古本屋でも見かけないし、まして新刊書店になんぞで、これからも並らぶこともあるまい。かく言う私も読んでもいなかったし、買おうと思ったことのある作家ではない。
この表紙絵のおかげである。暖簾越しに楽屋の鏡台が見える情景で、雰囲気が出ていい絵である。作者は遠い昔、挿絵で活躍した清水三重三だった。それで買ってしまった。
仙花紙本の粗末な本だが、調べてみると、吉井勇のこの作品は戦前全集本に収録はされていたが、これだけで一冊にはなってなかったようだ。桃源社の前身の矢貴書店の味な計らいの賜物か?
† 狂える戀
吉井 勇/著
清水三重三/装釘(この本ではこの字を使っておる)
矢貴書店●
●昭和23年3月10日発行●B6判 329頁 90円
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東君平のカバー「ローマ劇場毒殺事件」 ― 2013/08/28 14:01
私は永らく東君平氏を漫画家・イラストレーターだと思っていたが、ネットで検索してみたら、絵本作家として通っている方だった。
いつから先生がこのクイーンのシリーズのカバーを担当なさったかは定かではないが、角川文庫のクイーン物は一時期全部東君平氏のものであったと思う。このことは巷間あまり知られていないのだろうか。
私はそのうちの四、五冊ぐらいしかまだ見ていないのだが、この「ローマ劇場毒殺事件」が一番の傑作と思う。推理小説を暗示していながら、眺めていて、不思議と静かな気持になるカバーである。
† ローマ劇場毒殺事件
エラリー・クイーン/著 石川 年/訳
東 君平/カバー
角川文庫●
●昭和38年6月30日初版 昭和42年7月10日四版発行 カバー 267頁 160円
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