メグレ物の装幀 高井貞二の仕事『水門』2013/11/27 09:05

装丁/高井 貞二

この春秋社の本では以前、装幀を三芳悌吉氏が手掛けられたものを紹介したが、この「水門」の表紙もいい。眺めていると、フランスで運河の旅をしている気分になれる。

作者は高井貞二氏。迂闊ながら、和歌山県立美術館で二年前に回顧展があったことはネットで調べるまで知らなかった。

戦前のこのシムノン・シリーズの翻訳は十一冊あって、今となっては全部で珍本。そのうち六冊がメグレ物と思われる(古書肆・芳林文庫・探偵趣味三号による)。

眺めるだけならこっちでも構わないが、読むことを想定すると、河出の五十巻本を推薦する。(こっちも絶版だが、図書館にはある)。


† 水門


 ジョルジュ・シメノン(シムノン)/著 伊東鋭太郎/訳

 装幀/高井 貞二

 春秋社●

 ●昭和12年5月20日発行●四六判 187頁 60銭


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勝呂忠の足跡(2)シメノン選集『過去の女』の表紙2013/04/30 07:45

装幀/勝呂 忠

シムノンといっても、非メグレ物には余り興味がないので、この早川のシメノン(シムノン)選集は全部集めていないと思う。。

古書肆「芳林文庫」の目録によると、このシリーズはメグレ物も含んでいて全部で九冊あるが、勝呂忠のほかに上村経一が具象画のカバーを描いていて、その数も多い。

この勝呂のカバーにしても、過渡期なのか、後年のポケミススタイルにはまだなっていない。この具象っぽいところが何とも面白い。「判事への手紙」の表紙も勝呂だが、こっちの表紙のほうがいい。


† 過去の女


 ジョルジュ・シメノン(シムノン)/著 松村 喜雄/訳

 装幀/勝呂 忠

 ハヤカワポケットブック802●早川書房

 ●昭和30年5月31日発行●ポケット判(104×180ミリ) 169頁 130円


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こんな装幀家がいた(一)内間安(王星)あんせい2012/09/09 10:11

装幀/内間安(王星)あんせい

ジェームズ・ケインの名作、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は翻訳者の多い本である。

私の知り得た範囲ではあるし、ミステリ分野に限るが、シムノンの「男の首」の次ぐらいではないか。

この「飯島正」を筆頭に、出版順にいうと、蕗沢忠枝、田中西二郎、田中小実昌、中田耕治の五人、錚々たる顔ぶれである。

因みに「男の首」は八人の訳者がいる。戦前の永戸俊雄に始まり、宮崎嶺雄、堀口大學、三好 格、宗 左近、石川 湧、木村庄三郎、矢野浩三郎の諸氏が続く。まあ、日本で一番売れたシムノンの本であろう。


† 郵便配達はいつもベルを二度鳴らす


 ジェームズ・ケイン/著 飯島 正/訳

 装幀/内間安(王星)あんせい

        ↑王偏に旁が星の字がない

 荒地出版社●

 ●1953年5月20日初版発行●B6判(128×182ミリ) 171頁 200円


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装幀に屈託あり(28)シムノン「自由酒場」の装幀者は?2012/02/15 10:20

装幀/東郷青児(推定)

シムノンの『自由酒場』である。

原題は「Liberty Bar」という作品で、この翻訳書の前に別の出版社から本書と同じ伊東鋭太郎訳で出ているが、あれから七十年以上経った今日まで、日本語訳はこの訳者のものしかない。

以前、といっても、昭和三十年に遡るが、モダンミステリの一冊として、曽根元吉訳の新刊予告がされていたが刊行はされてない。

この戦前に出た本だが、例のごとく装幀者の記述のない一冊。しかし、「おんな」や「ひと」の顔がいくつも描かれていて、どうもどこがで見たような仮面的造形とも思えた。

それは誰あろう、かって二科会を率いて活躍した東郷青児である。 先生の画集を調べると、戦前、パリから戻ったころの描いた『椅子』という作品の女の顔に酷似していた。

それに箱の裏の大きな丸。これは東郷青児が好んで、装幀に使ったデザインを髣髴させる。以上、顔と丸で、もしかしたら東郷青児ではないかと、勝手に推定?


† 自由酒場(付 倫敦から来た男)


 ジョルジュ・シメノン(シムノン)/著 伊東鋭太郎/訳

 装幀/東郷青児(推定)

 アドア社●

 ●昭和11年11月9日発行●四六判 上製箱 364頁 1円80銭

装幀に屈託あり(19) 伊東鋭太郎訳、シムノン 「リェーヂュの踊子」2011/12/31 09:47

三芳悌吉/装幀

三芳悌吉の装幀である。書き文字とスケッチ画で構成した先生の装幀は巷間余り取り上げられることはないが、私は好きである。

戦前の本の常か例によって、この本、装幀者の名がない。何とか特定できないものかと、仔細に眺めて「み」というサインを発見した。

同じシリーズの「モンパルナスの夜」は、「三芳悌吉」と最終頁に装幀者が明記されていて、その表紙絵にやはり「み」のサインがあった。

この「み」が決め手になって、目出度く特定できたわけである。

ちなみに三芳先生の「モンパルナスの夜」は表紙絵が良かったのであろう。フランスで出たあるシムノン研究書で、メグレ物の各国の翻訳本の日本語代表に選ばれていた。


† リェーヂュの踊子


 ジョルジュ・シメノン(シムノン)/著 伊東鋭太郎/訳 三芳悌吉/装幀

 春秋社●昭和12年5月20日発行

 ●四六判・193頁 60銭


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