ポケミス装幀の傑作!浜田稔の「殴られたブロンド」 ― 2014/01/23 11:13
もう随分たったがポケミスの装幀が変わった。そのほとんどの装幀を描き続けてきた勝呂 忠氏の死去に伴い仕方ないが、このリニューアル、なかなか馴染めないものがある。
ポケミスの表紙は当初はこの浜田氏も含めて何人かの画家さんが描いていた。勝呂氏も最初から抽象画であったわけではない。具象画も時々古本屋で見かけることができる。
新刊書店でポケミスの棚を見たら、1700番台ぐらいはまだ、勝呂忠だった。それにしても凄い発行点数である。
そのすべての装幀画を見たわけではないので、断定はしないが、この「殴られた眼の隈のある顔」を大写しにした浜田稔の手際は見事なもので、ベスト・テンには入る作品だろう。
† 殴られたブロンド
E・S・ガードナー/著 砧 一郎/訳
浜田 稔/装幀
早川書房●ポケミス(180)
●昭和33年4月15日4版 発行●234頁 160円
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中井幸一の装幀(2)『リスとアメリカ人』 ― 2014/01/03 18:59
昨年、またまた古書展で、中井先生の装幀本を見つけてしまった。有馬頼義の傑作『リスとアメリカ人』が彼の手になるものだったとは!。知らなかった。ムダ足になっても古本市には通うもの。
本体、箱に留まらず、扉、目次ページも計算された配慮が感じられ、昔はこういう丁寧な仕事があったのだ。名作は名装幀を呼ぶ。2014年劈頭に紹介出来るのがうれしい。
† リスとアメリカ人
有馬頼義/著
装幀/中井 幸一●題字/直木 久蓉
講談社●
●昭和34年8月20日発行●四六判 127×188ミリ 300頁 290円
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モダンアートの人 村井正誠の装幀『法学新書・死刑』 ― 2013/10/07 10:41
村井正誠先生といえば。戦前からで日本の美術界を牽引してきた、モダンアートの長老である。
すでに亡くなられてから久しいが、こんな小品のお仕事もされていた。本の内容とは無関係な装画ではあるが、一つの作品宇宙を形成して揺るぎない。ほんの手遊びとしても素晴らし作品である。
† 法学新書(3)死刑
正木 亮/著
装幀/村井 正誠
河出書房●法学新書
●昭和31年3月10日発行●105×175ミリ 255頁 120円
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モダンアートの人 中井幸一の装幀『現代芸術はどうなるか』 ― 2013/09/23 15:33
中井幸一といえば、かって電通でのその辣腕ぶりが有名だが、戦後の美術界での活躍も忘れてはならない。ご高齢の今も毎年のモダンアート展には出品を重ねておられる。
この装幀も電通時代の手遊びだろうが、空間構成。脂ののったところ、出来映えは憚りながら文句のいいようがない。
先生にどのくらいの装幀作品があるのか資料がなく心許ないが、これはそうしたものの第一級の一つには間違いない。この本に出会えたことがうれしい。
† 現代芸術はどうなるか
佐々木基一/著
装幀/中井 幸一
講談社●ミリオン・ブックス
●昭和34年1月27日発行●112×172ミリ 243頁 180円
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モダンアート創立展に出品、荒井龍男の装幀『幸薄くとも』 ― 2013/07/23 09:40
ウィラ・キャザー。近年、すっかり忘れられた作家である。戦前、戦後にかけて、いろいろ翻訳されたにも、かかわらず、その作品は現在、数点訳書があるのみで、文庫では読めない。
この『幸薄くとも』も珍本の部類。読みたければ国会図書館へ行かなければならない(ネットで検索したら、某翻訳書専門店に在庫があったこともあるが)
その本の装幀者が荒井龍男。浅学にして、存じ上げなかったが、美術出版社から作品集が出ていた。年譜によると、戦前パリに留学、戦後モダン・アートの創立展に出品されていた。
そんな履歴の方が私の好きなキャザーの本の装幀をしていたとは。抽象っぽい感じで、古い焼き物の絵付けを思い出させる面白い表紙になっている。
装幀が取り持つ縁で、未知の人が既知の人になって、うれしい。これも図書館とネットのお陰である。
† 幸薄くとも
ウィラ・キャサア(キャザー)/著 宮西 豊逸/訳
装幀/荒井 龍男
昭森社●
●昭和17年8月20日発行●四六判(130×187ミリ) 258頁 1円80銭
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