装幀に屈託あり(31)これが岡本太郎の仕事?林房雄『香妃の妹』2013/04/04 07:59

岡本太郎/装幀

終戦翌年の年の暮れ発行の仙花紙本だった。混み合う即売会で、理不尽な書痴たちに揉みくちゃにされながら、手にとった。

歳月の割には保存良好。蝶々の絵は誰?と頁を開くと、岡本太郎とあった。

先生らしくない装幀である。が、太郎となっているのだからと買うには買ったが、スキャンしても、らしくないものはらしくないので、直らなかった(アタリマエ)。

何か蝶々に屈託があったのだろうか? 太郎先生の美術館は装幀に対して冷たいから、困った末のこんな酔狂もいいだろう。


† 香妃の妹


 林 房雄/著 岡本太郎/装幀

 後藤書店●昭和21年12月15日発行

 ●B6判 266頁 20円


田中一光の装丁(2)デュラスの初期作品『夏の夜の十時半』2013/04/07 07:48

装幀/田中一光 写真/奈良原 一高

奈良原一高とのコラボレーションといったらいいのか、今見ると贅沢な組み合わせである。そんな時代もあったのだ。みゆきの名曲『時代』が耳元で響く!

何しろディラスも、まだ新人だったからデュラを表記されていて、びっくりする。一頃の勢いはなくなっても、彼女はフランス文学を代表する作家であるから、これも昔日の感を否めない。

このカバーの本も、今となっては珍しいが、このところの古書価格の凋落で、均一本で転がっていても、もはや誰も手に取って見ることもないだろう。


† 夏の夜の十時半


 デュラス/著 田中 倫郎/訳

 装幀/田中一光 写真/奈良原 一高

 河出書房新社●

 ●昭和36年8月25日発行●B6判 211頁 320円


源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/


勝呂忠の足跡(1)ハヤカワポケットブック『私たちは孤独ではない』2013/04/10 15:33

装幀/勝呂 忠

知り合いの大先輩に案内状頂いて、毎年桜の頃、上野であるモダンアート展に行く。

今年の特別展のテーマは『もう一度みたいあの作家』であった。会員のアンケートで招待作家を決めたようだが、そこに誰あろう、ポケミスの表紙画スタイルを作った俊才、勝呂忠の作品が二点あった。

帰宅後、家宅捜索をして、古いポケットブックをランダムに取り出すと氏の作品も出てきた。

その表紙画は具象から抽象に移る過渡期のもので、今からざった半世紀以上前の作品であった。


† 私たちは孤独ではない


 ジェイムズ・ヒルトン/著 村上 啓夫/訳

 装幀/勝呂 忠

 ハヤカワポケットブック507●早川書房

 ●昭和29年5月5日発行●ポケット判(103×182ミリ) 144頁 120円


源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/


こんな人が装幀を!(六)とぼけた味わい和田三造『快馬一鞭』2013/04/15 18:43

装幀/和田三造

明治、大正、昭和に渡って活躍した和田三造の装幀本である。伸びやかな筆致のうちに、少し惚けた味わいがあって巧い、実にいい仕事である。

しかし考えてみると、教科書にも作品が載っている大巨人の展覧会や回顧展はあまり覚えがない。図録なども流布していない。調べてみると、あの東京大空襲のため、その主要に作品は焼尽したとのこと、実に残念である。

たまたま、古書展でこの美しい本に出会い購入したが、これからも機会があれば、先生の装幀の本をいろいろ見てみたいものだ。


† 快馬一鞭


 南陽 坪野平太郎/著

 装幀/和田三造

 東京實業社●

 ●昭和10年10月12日発行●箱 四六判(127×187ミリ) 325頁 貳円


源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/


福沢一郎の仕事 シンクレア・ルイス『血の宣言』の装幀2013/04/21 10:46

福沢一郎/装幀

何とはなしにネットで展覧会情報を眺めていたら、福沢一郎の名前が出てきた。世田谷の砧の記念館で、六月三日まで「とっておきの福沢一郎」展をやっている。

確かこの人の装幀本何か持っていたなと、例によってガサゴソ捜索すると、この本が出てきた。

ちゃんと扉裏面に福沢一郎の名前があるから、確かだが、サインはめずらしく「ひらがな」で「ふくざわ」。

デッサン調の絵だから、先生のどの時代の画風とも異質な印象もするから、サインや装幀者名の記載がなければ、ちょっと先生の作とするのは躊躇するところであった。


† 血の宣言(下)


 シンクレア・ルイス /著 龍口直太郎 /訳

 福沢一郎/装幀

 リスナー社●

 ●昭和25年2月1日発行●B6判・カバー 379頁 230円  


↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の装幀についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/