装幀アットランダム(16)女房孝行?、中川一政の「話しかける彼等」2012/08/02 09:00

装幀/中川一政

マッカラーズの処女作にして、出世作『心は孤独な狩人』の初訳である。戦前、この原書の出版から日を置かず、邦訳されれいたとは一つの驚きである。

訳者はかの大御所・中川一政の奥さん、これも驚き!。アメリカ文学に通暁していたのだ。

旦那さん、表紙ばかりでなく、扉絵も描いていて、女房孝行、ここに極めり。えらい先生だから、装幀の出来不出来はあえて不問。

しかし、時間ができたら、ゆっくり読んで訳文を検討をしてみたい気持はある。


† 話しかける彼等


 カアスン・マックカラーズ(カーソン・マッカラーズ)/著 中川 のぶ/訳

 装幀/中川一政

 四季書房●

 ●昭和15年12月28日発行●四六判 並製 446頁●2円

装幀アットランダム(17)岡本 かの子の「河明り」2012/08/04 10:24

装幀/川島 理一郎

かの子の本だから、日本画風の装幀にしたのだろうか。内容に即して、表現も過不足なく、画面構成も決まった品のいい装幀である。

装幀者は川島理一郎。私は不勉強で存じ上げない名前だが、アメリカで絵画を学んで戦争を挟んで活躍した洋画家らしい。

岡本かの子の本の装幀の中では、「巴里祭」の再版の息子太郎の仕事が一番と思っているが、これはその次としたい出来である。


† 河明り


 岡本かの子/著

 装幀/川島 理一郎

 創元社●

 ●昭和14年6月22日発行●B6判 上製箱入り 254頁 1円70銭

自著自装本(2)またまた、高峰秀子の本「まいまいつぶろ」2012/08/16 10:25

装幀・画/高峰秀子

デコちゃんこと高峰秀子はよくよく本作りが好きだったのだろう。この二冊目の著書も自装本である。

前作のコンセプトを踏襲して、立派な作りの本で、出来映えも文句のつけようもない。版元も同じである。

「まいまいつぶろ」とは、かたつむりのことらしい。この本で初めて知った。

ところで、彼女、エスカルゴを渡仏の際、食べたのだろうか、さあ思い出すことが出来ない。久しぶりに『巴里ひとりある記』を読み直すとするか。


† まいまいつぶろ


 高峰秀子/著

 装幀・画/高峰秀子

 映画世界社●

 ●昭和30年6月1日発行●A5判変型(146×190ミリ) 箱 165頁 380円


↓角川文庫の翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/

花田清輝の本 石元泰博&岡本太郎の共演!「大衆のエネルギー」2012/08/22 07:20

石元泰博/写真撮影 岡本太郎/カバー構成

私にとってもう少し生きていてほしかった人が二人いる。辻静雄と花田清輝である。

辻先生は六十、花田先生は六十五。共に早過ぎる年齢で、残念でならない。

私はとっくにご両人の亡くなられた年齢を越えてしまって、ただ老いの身をかこつのみ。

共に書物を通じてだけの出会いに過ぎなかったが、同時代を共に生きられ、その才能の一端に触れられたのをありがたく思っている。

この本は戦後の文学論争の盛んなころ出た傑作。花田、岡本、石元の揃い踏みは実に豪華、こんな出会いは滅多にお目にかかれまい。


† 大衆のエネルギー


 花田清輝/著

 石元泰博/写真撮影 岡本太郎/カバー構成

 講談社●

 ●昭和32年12月10日発行●四六判(128×188ミリ)・カバー 260頁 280円

発見かな! 辻まことの装幀本「天皇の食卓」2012/08/25 10:13

辻 一(まこと)/装幀

最近になって、十年ほど前なくなった父の蔵書を整理していて、この本を見つけた。中身はともかく、きれいなカバー絵の本なので、どなたの作品なのかと頁を繰ってみると、「装幀・辻一」とある。

これはかの「辻まこと」ではあるまいか。山や登山の風景画は知っていたが、こんな静物画は見たことがなかったので、びっくりした。

一応、辻一とあるのであるから、そういうこととしてご紹介する。

この本、こまごまと昭和天皇の日常生活が綴られた面白い本なことは確か。作者の入江三郎って、どういう方なのでしょうかね。


† 天皇の食卓


 入江三郎/著

 辻 一(まこと)/装幀

 共同出版社●

 ●昭和28年12月25日発行●四六判・カバー 269頁 250円