装幀に屈託あり(2) 柳澤 健『回想の巴里』 ― 2011/09/22 08:27

画家としてばかりでなく、ブックワークの世界でも活躍した藤田嗣治画伯。その本の仕事の全貌が今年になって、林洋子さんという京都の大学の先生の手によってまとめられた。
新書ながら丹念に調べあげた入魂な仕事で、一読感服。そういえば確か仙花紙の嗣治の装幀本があったぞと、乱雑本棚をがさごそと…。
やっと出てきたと思ったら、扉の挿絵はどうか知らないが、表紙は明らかに戦前の文藝春秋(1940年10月号)に載せたイラストのリライトでした。
著者の自序によると、嗣治先生、旧友の装幀の依頼に『この種の注文は最近は一切断って、自分の仕事に精進をしているのだが、君の頼みじゃ…」と言って進んで引き受けてくれたとある。
が、しかし、二十年来の友人に、そんなに恩着せがましく言っておいて、一度描いた絵のなぞりを寄越すなんて!(私が腹を立てることじゃないけれど)。
こんなことが林先生のお仕事でわかってしまって、懇切丁寧が仇。何と言ったって、文春に載ったいた挿絵の方が、数段いいんですよ。
†回想の巴里
柳澤 健/著
酣燈社●昭和22年10月5日発行
●B6判・211頁 65円
†藤田嗣治 本のしごと
林 洋子/著
集英社新書ヴェジュアル版●2011年6月22日発行
●新書判(106ミリ×173ミリ)・253頁 1200円
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