こんな人が装幀を!(四)岡倉士朗の手すさび、『街の風景・地下鉄』2013/01/26 12:35

装幀/岡倉士朗

岡倉士朗といえば、むかし昔の舞台演出家として著名だが、若い頃(大東亜戦争前)戯曲集の装幀もやっていたのだ。

先生の演劇上の履歴や業績に不案内な私には何ともいえないが、新築地座にいたことからすると、このライスの戯曲集は内容からして、舞台かけるための翻訳してもらっての出版だったか。

玄人はだしの腕? まあ昭和初期の雰囲気を良しとして、まずは及第。


† 街の風景・地下鉄


 エルマー・ライス/著 杉木 喬/訳

 装幀/岡倉士朗

 健文社●

 ●昭和11年8月20日発行●四六判(128×188ミリ) 308頁 1円


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これは珍しい! 流政之の装幀「ストーン夫人のローマの春」2012/11/12 10:03

流 政之/装幀

現代彫刻の巨人「流政之」の装幀本である。奥付からすると。石の造形を発表する前である。紙の上の仕事にも手を染めていたとは知らなかった。

テネシー・ウィリアムズのこの作品、新潮文庫本では知っていたが、初出の装幀が後の大作家の作品であったとは知らなかった。

後の石による造形のエスキスを思わせる表紙ではあるが、まあ、「流」サインがなければとても、先生の手になるものとは判断できないだろう。戦後翻訳文学の隆盛の賜物としたい。


† ストーン夫人のローマの春


 テネシー・ウィリアムズ/著 田島 博&山下 修/共訳

 流 政之/装幀

 創元社●

 ●昭和28年9月25日発行●B6判・カバー 238頁 260円

装幀アットランダム(18)テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」2012/09/22 10:48

装幀/吉原 治良

テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」初訳本である。ブロードウェイで大当たりをとり、映画化されたこともあり、後にこの本は新潮文庫になった(現在あるのは小田島先生の新訳)。

版元はつぶれる前の創元社で、まだ、ミステリなど出していない大阪にあったころの出版で、昔日感無量である。

永らく探していて、お目にかかれなかった本。手に入れて、またビックリした。

装幀はかの「カルバドスの唇」の吉原治良。ちょっとゴチャゴチャして、装幀としてはどうかという画面だが、もの珍しいさも手伝って取りあげることにした。


† 欲望という名の電車


 テネシー・ウィリアムズ/著 田島 博&山下 修/共訳

 装幀/吉原 治良

 創元社●

 ●1952年10月10日発行●B6判 上製カバー 320頁 300円

こんな文庫・あんなカバー(17)林静一らしくない『毛皮のマリー』2012/07/31 08:20

林 静一/カバー装幀

角川文庫の寺山本、二一冊のカバーのそのほとんどが林静一である。らしいカバー絵で、林ワールドが満喫できる。

その中でこの文庫だけは、書名のせいじゃないだろうが、毛色が変わった画風で、林先生にしては異色作ではなかろうか。私はこの単純な線によるレイアウトに驚いた。

残念なことは、最近の重版の装幀は写真に変更されていて、林静一の絵ではないので、このカバー本も新刊では買えない。


† 戯曲 毛皮のマリー 角川文庫 


 寺山 修司/著 林 静一/カバー装幀

 角川書店 昭和51年1月30日 初版 発行

 A6判(105×148ミリ) 352頁 340円

全集&叢書の装幀(2)亀倉雄策の『アメリカ文学選集』2012/06/07 06:29

亀倉雄策/装幀

昭和のその昔、各種文学全集がいろいろな企画のもと刊行され、書店に綺羅星のごとく並んでいたが、とんと最近は見かけない。

翻訳文学の世界でいうと、二〇世紀最後の『集英社ギャラリー世界の文学』以降、皆無である。

昭和三十年代の初めに企画出版された研究社のこの全集を覚えている方がおられるだろうか。

コンパクトなサイズ、モダンなブックデザインでいい。今でも書棚に飾るに相応しい全集本である。

掲載のカバーのみならず、箔押しの表紙と扉のデザインも含めて、この装幀を担当したのが、東京オリンピックのポスターで著名な亀倉雄策である。

戦後全集本の装幀の第一級作品に違いない。


† わが町 他四篇 アメリカ文学選集(第五回)


 ワイルダー/著 松村道雄 鳴海四郎/訳 亀倉雄策/装幀

 研究社 昭和32年7月20日 発行

 B6判変形(125×166ミリ) 210頁 230円


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