没後出版、岸田 劉生『美の本體』の苦肉の策? ― 2014/08/15 17:04
この本の初版は昭和十六年の五月。劉生である。十一版だから、戦争中でもよく売れたらしい。もちろん、著者の没後の出版だから、劉生先生ご本人は関与していない。
しかし装幀はまさしく「劉生調」そのもの。カバーはどこかで見たような気がして仕方ないので、その昔出た「岸田劉生装幀画集」を取り寄せ閲覧した。
貴重な本なので、貸し出しは駄目で、図書館内だけの閲覧である。全部で62点の装幀作品が掲載されていた。
掲載した『美の本體』のカバーはその48番目の佐藤春夫の『我が一九二二年詩集』の表紙と同じ絵柄であった。木版であるから、摺の加減か微妙に違っているが、もしかしたら、通勢先生が題辞をはめ込む時についでに模写したのかしら?、委細は分からない。
ちなみに本体の装幀は「岸田劉生装幀画集」の最後、62番目に掲載されていた『木下利玄全歌集』のそっくりさんでした。
※この本の昭和17年頃までの重版は函入りであった。絵柄はカバーと同じ。2014年9月6日
† 美の本體
岸田 劉生 /著 武者小路 実篤/序
岸田 劉生/装画 河野通勢/題簽
河出書房◎
★昭和18年10月20日11版印刷発行★B6判・カバー 323頁 2円30銭+特別行為税相当額30銭合計 2円37銭
↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ//
http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html
シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/
↓http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/
真鍋博の装幀本、水上 勉『海の牙』 ― 2014/06/07 00:03
発行は昭和三十五年。私の中学生の時の本だ。安保で日本が揺れ動いた時代、この本に扱われた公害問題も起こる。思えば遠い昔である。作者の水上勉も流行作家になる前だった。
装幀は真鍋博、カバーばかりでなく、本体も、扉も赤一色。そこに海と断崖群れ集う海鳥が墨で描かれている。まだ後年の真鍋調の絵ではないが、迫力のある画面を作っている。
† 海の牙
水上 勉/著
真鍋 博/装幀
河出書房新社●
●昭和35年4月15日発行●B6判・カバー 250頁 280円
↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ//
http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html
シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/
↓http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/
松本竣介の装幀本があった! ― 2014/05/25 15:14
山口蓬春の装幀、舟橋聖一「夏子の四季」 ― 2014/02/03 10:49
久しぶりの惚れ惚れする装幀に出会った。
山口蓬春。
私などあまり馴染みのない画家であるが、こんなモダンな感覚に驚くとともに、装幀の仕事もあったのかと二重にびっくりした。
舟橋聖一。
昔々の流行作家ではあるが、今では新刊で読める作家であるまい(手元にある最近の角川文庫の目録には何もない)。すっかり忘れられたというより、存在しない作家?
しかし、花形作家の頃はこんなにいい装幀で本が出していたのだ。
† 夏子の四季
舟橋 聖一/著
山口 蓬春/装幀&カット
新潮社●
●昭和29年2月15日初版 発行●四六判(128×186ミリ)・カバー 319頁 200円
↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/
http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html
シムノンのメグレ本の装幀についてはこちらへ/
↓http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/index.html
伊丹十三の自装本「ヨーロッパ退屈日記」 ― 2013/12/06 07:19
昔の東京オリンピックの翌年出た本。彼がまだ役者だった頃のものである。カバー裏に山口瞳による伊丹十三論がある。氏は伊丹十三と、彼が十九の頃から付き合いがあったそうだ。
今となって、この人物評を読むと、自死を選択してしまうその後を思わせるものがあって、山口瞳のある種の鋭さにびっくりしてした。
表紙のコラージュはご本人による。本文に挿入されている著者自身による挿絵もたくさんあって楽しい本であるので、今にして思えば余計悲しい。再婚した宮本信子さんの若き日の名古屋栄の地下街を舞台にしたNHKのドラマが思い出された。
彼女も初々しく、瞳さんが十三に会った一九歳ぐらいではなかったろうか。気分はちょっとセンチメンタル。この本を少し読み直してみよう。
† ヨーロッパ退屈日記
伊丹 十三/著
伊丹 十三/装幀&カット
文藝春秋●ポケット文春550
●1965年3月20日初版 1971年5月20日八刷発行●新書判(112×174ミリ)・カバー 258頁 300円
↓源義&春樹さんの角川文庫・翻訳文学はこちらへ/
http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html
シムノンのメグレ本の装幀についてはこちらへ/
↓http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/
最近のコメント