横尾忠則の自装本「一米七〇糎のブルース」 ― 2014/07/12 18:01
向かうところ敵なし、そんなイラストレーターでした。一九七〇年代の先生は。確かに。そんな時代を感じさせる文庫本である。
彼が装幀、イラストレーションを担当した寺山修司の自伝『書を捨てよ。町へ出よう』に多様された、ピンクガールズを表紙に持ってきたところを見ると、余程のお気に入りのキャラクターだったのだろう。
裏表紙の自作自演の映画ポスターも異常な自己顕示欲を見せて、また彼の面目躍如。勢いづく日本、あの時代が今となっては不思議と懐かしいのは、あながち、私ばかりではないのかも知れない。
† 一米(メートル)七〇糎(センチ)のブルース
横尾忠則/著 カバー(装幀)
角川文庫●緑410-1
●昭和54年8月10日再版(初版同年4月30日発行) カバー 226頁 260円
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横尾忠則の仕事 『グリニッジの光りを離れて』 ― 2014/07/09 17:57
昨年、大御所デザイナーの横尾忠則氏の装幀の本が出来た。たまたま近くの図書館に収蔵されていたので、借り出して見た。
氏の長年にわたる仕事の集大成だから、版も大きく分厚く重い本であった。圧倒的な迫力である。昔むかしの、寺山修司の本などが出てきて懐かしかった。
中でも、先生の作品らしくないのが、ご紹介するこの本の装幀だった。ご自身の語ることによると、画家宣言をした1980年、著者からの依頼の仕事であったという。非常に絵画的で、それまでの横尾調は全くない、異色の作品である。
「全装幀集」には、カバーの表面しか複写されていなかった。裏表紙まであったほうがいいので、以前、買ってあった所持本で、裏面までスキャンした。
† グリニッジの光りを離れて
宮内勝典/著
装幀/横尾 忠則
河出書房新社●
●1980年11月4日再販発行(初版同年8月25日)●四六判 196頁 980円
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真鍋博の装幀本、水上 勉『海の牙』 ― 2014/06/07 00:03
発行は昭和三十五年。私の中学生の時の本だ。安保で日本が揺れ動いた時代、この本に扱われた公害問題も起こる。思えば遠い昔である。作者の水上勉も流行作家になる前だった。
装幀は真鍋博、カバーばかりでなく、本体も、扉も赤一色。そこに海と断崖群れ集う海鳥が墨で描かれている。まだ後年の真鍋調の絵ではないが、迫力のある画面を作っている。
† 海の牙
水上 勉/著
真鍋 博/装幀
河出書房新社●
●昭和35年4月15日発行●B6判・カバー 250頁 280円
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石岡怜子の装幀、角川文庫「Zの悲劇」 ― 2013/12/02 09:03
姉妹揃ってデザイナーである。お姉さんの瑛子先生同様、妹さんの怜子氏も装幀の仕事をしている。この大胆に英文字をを使った作品は角川文庫でも出色。言うならば、読まずに眺める文庫である。
が、しかし、このクイーンシリーズ、カバー袖の案内によると、全部で十四作品あるが、なにしろロングセラーなので、重版の際、時々思いついたようにデザイナーやイラストレーターを替えて、新しい装幀にしている。
私の昔、一度はその全点の蒐集を目指したこともあったが、途中で挫折した。今となってはその全容を知ることは至難の業と思う。
† Zの悲劇
エラリー・クイーン/著 田村隆一/訳
石岡 怜子/装幀
角川文庫●
●昭和40年5月30日初版 昭和51年4月30日十八版発行●文庫判・カバー 367頁 300円
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石岡瑛子の装幀、モラヴィア「パラダイス」 ― 2013/09/01 08:26
一九七〇年原書が出たモラヴィアの短篇集の翻訳である。後書きによると欧米で大いに読まれたらしい。
この角川書店のこの翻訳シリーズは全十五巻であるが、当時の売れっ子のイラストレーターがデザイナーが装幀を担当していて、いずれも眺めていて楽しいカバーとなっている。
モラヴィアは一時期持て囃されて、その代表作はほとんど日本語になっていると思うが、今では、すっかり忘れ去られたようで、寂しい限りである。こんな短篇集があったことすら、覚えている人も今ではいないのかも知れない。
ちなみにモラヴィアの短編集で、まるごと日本語になった本はこれだけと、訳者は後書きで胸を張っておった。
† パラダイス
アルベルト・モラヴィア/著 大久保昭男/訳
石岡 瑛子/装幀
角川書店●海外純文学シリーズ(3)
●昭和47年3月20日初版 発行●四六判(128×188ミリ)・カバー 274頁 890円
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