駒井哲郎の仕事(2)シュティフテル『水晶』表紙2012/06/03 16:14

駒井哲郎/装幀

またまた、落ち穂拾いをひとつ。本の整理の途中で未読のシュティフテルが出てきた。八雲書店版『水晶』、珍しいことにちゃんと装幀者の名前が書いてあった。

誰あろう、駒井哲郎とあった。ヨーロッパの田舎町を何気ないタッチで描いてある。前に紹介した『パン屋の女房』と同年の巨匠若き日の装幀である。

実をいうと、今行われている世田谷美術館の「駒井哲郎・福原コレクション」に行くことになってから、たまたま、この本を雑書の山から見つけた。

これも何かの縁である、大著『駒井哲郎ブックワーク』には『パン屋の女房』と同様、この本の記載がないので、揚げ足とりかも知れないが敢えて取り上げた。

六月二日、昨日のことである。世田谷美術館講堂では高校の先輩である中林さんが話し手をされた「わが師駒井哲郎を語る」という講演会があった。

当日聴講に馳せ参じた後輩である私が、お節介にもこのコピーを持参して、会の終了後、中林先輩にお渡ししたが、今にして思えば余計なことであったかもしれない(本の装幀好きが勝手に興奮しただけ!)。


† 水晶


 シュティフテル/著 淺井眞男/訳

 駒井哲郎/装幀(カバー・扉)

 八雲書店●

 ●昭和24年3月30日発行●B6判・カバー 316頁 180円

駒井哲郎の仕事(1)美術手帖に『形体の不意打』を書く2012/04/16 17:53

駒井哲郎/文・挿画

美術手帖の増刊号『画家の随筆』に上記のタイトルで、短文とモノクロの挿画を寄せている。

前に引用した大著『駒井哲郎ブックワーク』年譜によると、29歳の時の仕事だから、先生の初期の作品と文章である。

「形なき形の呪われた断片。」に始まり、「記号等と云うものは、えらびにえらばれた、不可思議に象徴。妙に綺麗なものだ。」に終わるモノローグは深く心に反響し残る。


† 形体の不意打


 駒井哲郎/文・挿画

 ●美術手帖/7月号増刊 No.32 「画家の随筆」53頁

 美術出版社●

 ●昭和25年7月10日発行●A5判 90頁 65円

装幀アットランダム(11)三冊五百円の賜物「駒井哲郎」装幀本2012/04/04 08:41

装幀・表紙/駒井 哲郎

戦後は遠くなりにけり。昭和も終わって二十年以上たち、新世紀を迎えて、久しい今日この頃、戦後文学者たちの古書の値崩れが激しい。

昔だったら、古書店内の書棚に並んでいた本が、店頭の均一段ボールに投げ込まれている。

文芸書の老舗には、何と、ただの本も積み上げられて、そこを漁る古書好きが絶えない。

そんなこんなで、神保町でも結構な拾いものも、ある時はある。そんな一冊がこの本。大著『駒井哲郎ブックワーク』ではモノクロで小さくでしか紹介されていなかったので、実物を手に入れられて嬉しかった。


† 死の遍歴


 中村眞一郎/著

 箱・表紙・扉/駒井 哲郎 装幀

 文藝春秋●

 ●1970年11月25日発行●四六判(128×188ミリ) 上製・箱 249頁 750円


↓角川文庫の翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/

装幀アットランダム(5)駒井哲郎に惚れ惚れ! 「母を拭く夜」2012/01/27 08:17

装幀/駒井哲郎

前回に続けて、畑山博の作品集である。これは彼の四冊目の著作集で、それまでの本の装幀画はすべて、司修であったが、この本は大御所、駒井哲郎である。

昔は装幀で、書籍を購入していなかったから、この本は新刊では買っていない。

昨年のこと、『駒井哲郎のブックワーク』の限定本を見る機会を得て、畑山博の装幀画を描いていることを知った。

先生の全業績を通覧できる本を眺めて、この仕事はベスト・テンには入れてもいいのではないかと、僭越ながら思った。

うれしいことに、そのあと偶然均一本の棚で発見、購入することが出来た。


† 母を拭く夜


 畑山 博/著

 装幀/駒井哲郎

 講談社●

 ●昭和47年12月8日発行●四六判 カバー 245頁 580円

装幀に屈託あり(7)駒井哲郎とマルセル・パニョル2011/10/19 11:52

駒井哲郎・装幀

駒井哲郎は私の高校の先輩の美大での先生です。版画家としては最後の大御所で、この名前を超える作家はそうそうこれからも出てこないと思う。

そんな大御所がパニョルの本の装幀をしていました。パニョルといえば、映画「ファニー」のレスリー・キャロンは良かったが、彼女同様、その原作者のパニョルも、すっかり今では忘れ去られた存在です。

多情な恋女房を一途に愛するパン屋を中心とした人情劇ですが、まだまだ捨てたもんじゃありません、パニュルは。


† パン屋の女房


 マルセル・パニョル/著 永戸俊雄/訳 駒井哲郎/装幀

 雄鶏社●昭和24年11月10日発行

 ●B6判・210頁 160円


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