創元推理の表紙 粟津 潔の「ハンマーを持つ人狼」2012/12/01 11:52

粟津 潔/カバー装幀

大デザイナーの文庫の装幀である。

この指紋のパターンの装幀はあまりにも有名で、いまさらだが、創元推理の表紙として外すわけにはいかないので紹介する。

裏表紙まで続くデザインはカバーの初期のものと思うが、私は好きである。残念なことに、いつの間にか、そうしたデザインはなくなったようだ。


† ハンマーを持つ人狼


 ホイット・マスタスン/著 井上 勇/訳

 粟津 潔/カバー装幀

 創元推理文庫●

 ●1964年1月10日発行●文庫判(105×147ミリ)・カバー 330頁 180円

装幀アットランダム(21)吉田貫三郎の「山峡の夜」2012/12/04 08:59

装釘/吉田 貫三郎

戦後、創元推理文庫からでた「アルザスの宿」の翻訳本である。同じくメグレ物ではない「北氷洋逃避行」が併載されている珍品。

雪深い山荘の夜景が描かれていて巧みである。さすが吉田貫三郎。

昔、即売展の折り、探偵物の古書肆「芳林文庫」の棚で購入した。箱がなく鉛筆の書き込みが多数あったので、安価であった。


† 山峡の夜


 ジョルヂュ・シムノン(ジョルジュ・シムノン)/著 伊東鋭太郎/訳

 装釘/吉田 貫三郎

 春秋社●

 ●昭和11年10月12日発行●四六判 370頁 1円80銭

●パリの本(14)中村光夫の「戦争まで」2012/12/13 07:21

青山二郎/装幀

 文芸評論で一時代を築いた中村光夫の本である。若き日のパリ滞在記といったところか。先生筋の小林秀雄あての手紙という形式で書き始められている。

 装幀はかの青山二郎。あっさりとした表現で、腕達者な作品というべきか。品のいい仕上がりになっている。

 乱作気味のこの装幀家、あんまり好きではないが(はっきり言えば嫌いかな)、これなど我慢のうちというべきか、パリの本だから掲載した。


† 戦争まで


   中村光夫/著●青山二郎/装幀

   実業之日本社●昭和17年7月23日 発行

   B6判・箱●465頁●2円80銭

こんな人が装幀を|(一)「私のダダ」のカバーを河原 温が…2012/12/18 09:25

カバー構成/河原 温

戦後『浴室』シリーズなどの傑作を残して、メキシコに渡った河原温の装幀である。

日付絵画などで、今や観念芸術の分野では世界的に著名作家の若き日の仕事。後書きによると著者の江原順のたっての希望で実現したらしい。

かって「印刷絵画」を提唱したことがあるから、本の装幀にも何かしら考えがあったのだろう。“ダダ”という言葉で、この本を手に取ったのだが、お陰で先生の関わる珍しい本を買うことが出来た。


† 私のダダ 戦後芸術の座標


 江原 順/著

 カバー構成/河原 温

 弘文堂●現代芸術論叢書(6)

 ●昭和34年9月30日発行●B6判(128×182ミリ)カバー 208頁 300円


↓角川文庫の翻訳文学はこちらへ/

http://www.k5.dion.ne.jp/~miauler3/kado/kado00.html


シムノンのメグレ本の書誌についてはこちらへ/

http://www.asahi-net.or.jp/~px5t-isi/


永田一脩の装幀(1)「永」のサインがあった『金が書く』2012/12/21 08:05

装幀/不明(永田一脩とほぼ断定)

例によって装幀者の記述がない新潮社の本である。作家は戦前、プロレタリア文学で沢山翻訳が出たアプトン・シンクレア。

ただし、この表紙には「永」の字のサインがあった。プロレタリア文学の装幀者で、名前に「永」のつく人間を捜して、「永田一脩」に辿りついた。

なにしろ、この方、今ではあまり知られていない画家さんであるから、本もあまり残っていない。国会図書館まで行ってみた。

そこで彼が装幀したとされた著書を閲覧、そのうちの一冊の裏表紙に「永」の字に見つけることができたので、「永田一脩」と推定することした。


†金が書く


 アプトン・シンクレーア(シンクレア)/著 富田正文/訳

 装幀/不明(永田一脩とほぼ断定)

 新潮社●

 ●昭和5年4月8日発行●カバー 四六判(130×190)ミリ 335頁 1円40銭


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