装幀アットランダム(20)河野鷹思の「大學の門」に出会う2012/11/08 08:31

装幀/河野 鷹思

田村泰次郎は何とかの「門」というタイトルが好きだったらしい。寡聞にして、この本を見つけるまでこの作品のことなど知らなかった。

戦後すぐの仙花紙本であるが、この表紙に惹かれて手に取ると、装幀者が河野鷹思だった。

後で調べると初版は別の装幀だったらしい。版元はどんな事情で再版から装幀を替えてのか分からないが、デザイン界の大御所となる河野先生の仕事の一端に触れられて、こんなうれしいことはない。


† 大學の門


 田村泰次郎/著

 装幀/河野 鷹思

 イヴニングスター社●

 ●1923年5月2日二版発行●B6判 277頁 80円

これは珍しい! 流政之の装幀「ストーン夫人のローマの春」2012/11/12 10:03

流 政之/装幀

現代彫刻の巨人「流政之」の装幀本である。奥付からすると。石の造形を発表する前である。紙の上の仕事にも手を染めていたとは知らなかった。

テネシー・ウィリアムズのこの作品、新潮文庫本では知っていたが、初出の装幀が後の大作家の作品であったとは知らなかった。

後の石による造形のエスキスを思わせる表紙ではあるが、まあ、「流」サインがなければとても、先生の手になるものとは判断できないだろう。戦後翻訳文学の隆盛の賜物としたい。


† ストーン夫人のローマの春


 テネシー・ウィリアムズ/著 田島 博&山下 修/共訳

 流 政之/装幀

 創元社●

 ●昭和28年9月25日発行●B6判・カバー 238頁 260円

表、裏、背を使ってお見事。フジタの「支那事変」2012/11/16 09:56

藤田嗣治/挿画

藤田嗣治の絵を全面に使った装幀本である。著者は版元の社長として名高い。年譜によるとフジタは軍の嘱託で中国へ行く前、北京に行っているので、その時のスケッチを使ったのだろう。

本体と箱は同じ。表裏背の三面を全部使って、万里の長城を描いてある。余計なことであるが、折角なので、加工して、全面が一体化して見えるようにしてみた。

まあ、フジタにしてみれば、こんなものほんの手すさび、お茶の子さいさいだったろう。


† 支那事変 北支之巻


 山本実彦/著

 藤田嗣治/挿画

 改造社●

 ●昭和12年10月19日発行●四六判・箱 334頁 1円60銭

こんな装幀家がいた(二)内間安(王星)・続2012/11/19 09:13

装幀/内間安(王星)あんせい

こうして書棚に立てた感じで眺めてみると、実にいい絵だ。

昔から画家さんは、たつきために装幀の仕事を良くしたらしい。たぶんこのフォークナーの本もそうしたものの一つだろう。

お陰で、この忘れられた画家の創作の一端を今日楽しめるというわけである。

かっては全集まで出たフォークナーの本だが、今では見向きもされない作家の一人。この表紙でなかったら、私に拾われることもなく、紙屑として消えてしまったことだろう。装幀者に感謝かな。


† 兵士の給与


 ウィリアム・フォークナー/著 山屋三郎/訳

 装幀/内間安(王星)あんせい

        ↑王偏に旁が星の字がない

 早川書房●

 ●昭和27年4月25日初版発行●四六判(128×186ミリ) 410頁 350円


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全集&叢書の装幀(5)硲 伊之助の『ノーベル賞文学叢書』2012/11/24 09:33

硲 伊之助/装幀

戦前に編まれたノーベル賞受賞作品の文学叢書。であるからにして、ふさわしく品があって、瀟洒な体裁に思わず唸ってしまう。

装幀者はちゃんと記載があり、硲伊之助。これだけの第一級作品を創るだけのことはあるわけである。

この叢書は巻末の出版広告によると全18巻となっているが、全巻揃いで、まだ見たことがない。


† 印度物語・狂か聖か


 キプリング/著 渡 鶴一&佐久間 原/訳 硲 伊之助/装幀

 今日の問題社●ノーベル賞文学叢書(13)

 ●昭和16年11月15日 発行●四六判(130×185ミリ) 385頁 1円80銭



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