装幀アットランダム(11)三冊五百円の賜物「駒井哲郎」装幀本2012/04/04 08:41

装幀・表紙/駒井 哲郎

戦後は遠くなりにけり。昭和も終わって二十年以上たち、新世紀を迎えて、久しい今日この頃、戦後文学者たちの古書の値崩れが激しい。

昔だったら、古書店内の書棚に並んでいた本が、店頭の均一段ボールに投げ込まれている。

文芸書の老舗には、何と、ただの本も積み上げられて、そこを漁る古書好きが絶えない。

そんなこんなで、神保町でも結構な拾いものも、ある時はある。そんな一冊がこの本。大著『駒井哲郎ブックワーク』ではモノクロで小さくでしか紹介されていなかったので、実物を手に入れられて嬉しかった。


† 死の遍歴


 中村眞一郎/著

 箱・表紙・扉/駒井 哲郎 装幀

 文藝春秋●

 ●1970年11月25日発行●四六判(128×188ミリ) 上製・箱 249頁 750円


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装幀アットランダム(12)挿絵も表紙もいい東郷青児の本2012/04/09 10:00

装幀・挿絵/東郷 青児

織田作の小説だからだろうか、終戦、二年目にしてはキレイな本が出せたものである。この表紙も、扉絵も、挿絵も達者な青児ワールドが満喫できる。

彼の装幀の仕事として、誰もこれまで、着目しなかったは不思議でならない。仙花紙本を馬鹿にしてはいけない。コンディションもこの時代の物にしてはいいので、スキャンしてみた。

今回は表紙。次は挿絵を紹介したい。

† 夜の構図


 織田作之助/著

 装幀・挿絵/東郷 青児

 萬里閣●

 ●昭和22年4月15日発行●B6判 並製 243頁 45円

河出新書のカバー(1)ウィリアム・インジの「ピクニック」2012/04/12 08:40

カバー装幀/東郷青児

もう昔のことだが、河出書房はつぶれて新社として再建される前、カラーカバーの新書を出していた。

そのカバー装幀の絵を担っていたのは、その頃活躍していた画家たちだろうが、今では誰もその名を知らない名前が多い。

この本の東郷青児先生はその意味では例外だが、見ての通り何やら女体を描いていて、青児らしさが、微塵もないのが残念なところ。

まあ、珍しい作家の珍しい本だからいいかな、と思った次第である。


† ピクニック


 ウィリアム・インジ/著 田島 博 山下 修/訳

 カバー装幀/東郷青児

 河出書房●

 ●昭和30年11月30日発行●新書判(105×173ミリ) 174頁 100円

駒井哲郎の仕事(1)美術手帖に『形体の不意打』を書く2012/04/16 17:53

駒井哲郎/文・挿画

美術手帖の増刊号『画家の随筆』に上記のタイトルで、短文とモノクロの挿画を寄せている。

前に引用した大著『駒井哲郎ブックワーク』年譜によると、29歳の時の仕事だから、先生の初期の作品と文章である。

「形なき形の呪われた断片。」に始まり、「記号等と云うものは、えらびにえらばれた、不可思議に象徴。妙に綺麗なものだ。」に終わるモノローグは深く心に反響し残る。


† 形体の不意打


 駒井哲郎/文・挿画

 ●美術手帖/7月号増刊 No.32 「画家の随筆」53頁

 美術出版社●

 ●昭和25年7月10日発行●A5判 90頁 65円

手放した貴重な本(1)長田幹彦の「鴨川情話」2012/04/20 07:27

竹久夢二/装画

まずこの作者の名前でこの本を購入する人はいない。私も夢二装幀本の作者名で、その名を知るのみ。その小説も読んでいないし、その来歴も知らない。

この「鴨川情話」だが、何年か前オークションで売却してしまって、手元のないので書誌情報不足は否めないが、装幀を語る上で、竹久夢二は欠かすことが出来ないので掲載した。


† 鴨川情話


 長田幹彦/著

 竹久夢二/装画(箱&本体)表裏両面

 新潮社●

 ●大正4年10月20日初版/大正7年4月18日11版発行●箱