装幀に屈託あり(10)中川一政 「黄金部落」 ― 2011/11/13 10:50
なにしろ文化勲章作家である。アカデミックな教育から縁遠い、多才な画家であるし、文章もこれまたいいのだから、凡人の遠く及ばない高嶺の人である。
これは終戦直後の一番脂ののった頃の傑作ブック・ワークである。書名も芙蓉の花も勢いがあり、構図も大胆。晩年の薔薇の絵など、遠く及ばない仕事で、お見事の一言に尽きる。
扉絵の柿の絵もまたいい。1984年に形象社からでたブックワークの特装版をざっと見る機会を得たが、この本の仕事のレベルは群を抜いていた。晩年の向田邦子の「あ・うん」も悪くはないのだが。
† 黄金部落
火野葦平/著 中川一政/装幀
全国書房●昭和23年10月25日 初版 発行
●B6判・267頁 170円
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