こんな文庫・あんなカバー(8)川端康成『雪国』 ― 2011/11/08 11:26
河出文庫といっても、昔の河出書房の出した文庫。一時期、色刷りカバーをつけて、特装版として出版されていたものの一冊です。
カバーの作者は木村荘八、なんとも素晴らしい出来映えです。この文庫を手にとると、まるで自分が襟巻きを押さえながら、雪道を歩いている、そんな気分になり、思わず、むむと、唸ってしましました。
先生は戦前から活躍していた洋画家ですから、当然といえば、当然で、この何気ない仕事、光っています。かの永井荷風の『墨東綺譚』よりも、仕上がりは格段に上と思いますので、ご紹介します。
† 雪国 河出文庫特装版
川端康成/著 木村荘八/カバー
河出書房 昭和30年1月10日 初版 発行
A6判(105×148ミリ) 157頁 55円
装幀に屈託あり(10)中川一政 「黄金部落」 ― 2011/11/13 10:50
なにしろ文化勲章作家である。アカデミックな教育から縁遠い、多才な画家であるし、文章もこれまたいいのだから、凡人の遠く及ばない高嶺の人である。
これは終戦直後の一番脂ののった頃の傑作ブック・ワークである。書名も芙蓉の花も勢いがあり、構図も大胆。晩年の薔薇の絵など、遠く及ばない仕事で、お見事の一言に尽きる。
扉絵の柿の絵もまたいい。1984年に形象社からでたブックワークの特装版をざっと見る機会を得たが、この本の仕事のレベルは群を抜いていた。晩年の向田邦子の「あ・うん」も悪くはないのだが。
† 黄金部落
火野葦平/著 中川一政/装幀
全国書房●昭和23年10月25日 初版 発行
●B6判・267頁 170円
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こんな文庫・あんなカバー(9)唐十郎『戯曲 煉夢術』 ― 2011/11/21 18:51
装幀に屈託あり(12)サンリオ 「カタツムリの笛」 ― 2011/11/25 10:27
薄奈々美という人はなんと幸せな人であろう。蓼食う虫も好き好きということだろうが、寺山修司がぞっこん惚れ込んでしまった画家さんらしい。
この絵だが、はっきり言って、私にはどこがいいのかさっぱり分からない。もちろん好みの問題もあると思うが…。彼が存命なら聞いてみたいところである。
この人の絵本はあまり見かけない。寡作で出版される本もそんなに多くはないのだろう、まして寺山との共作、貴重な絵本であるのは確かだ。何とか自分に無理強いして納得した。
† カタツムリの笛
寺山修司/文&タイトル文字 薄 奈々美/絵 中島かほる/デザイン
株式会社サンリオ●1979年5月25日 初版 発行
●A5判・頁数 記載なし(扉・奥付共に64頁あり) 880円
カバー●本体表紙ボール紙装にもカバーと同じ絵あり
●パリの本(11)ニコ・ジェス「パリの女」 ― 2011/11/30 16:37
なぜか、このクラシックな装幀の本が新刊書店に並んでいた。奥付を見ると、去年の重版であった。今さら一九五〇年代のパリジェンヌの本が重版されたのか、皆目分からない。
暗い戦争が終わって、眩いばかりのパリジェンヌの躍動を活写したニコ・ジェスの写真は初版当時はかなりのインパクトがあったろうが、半世紀も経っての、この重版には正直びっくりした。
よくもまあ、写真版の製版フィルムを残していたものだと、変な感心もした。しかし、印刷は昔の本のほうが数段上出来である。因みに新刊定価は2980円でした。
† パリの女
アンドレ・モーロア/著 ニコ・ジェス/写真 朝吹登水子/訳
紀伊国屋書店 1959年5月7日 第2刷発行(第1刷 同年4月15日) 380円
A5判(148×210ミリ)
本文/68頁 あとがき/2頁 写真頁/記載なし 写真点数/114点
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