池袋昔日 その22011/09/06 09:15

池袋温泉(東京都豊島区)

七〇年代末 東京都豊島区池袋東


†駅から1分! 温泉がありましたよ

 いかにも場末めいた風情で、こんな写真を見ると、ついつい火事で燃えた日活などを思い出し、郷愁を感じるのは私ばかりではないでしょう。

 写真は、西口に抜ける山手線ガード下の専用通路を右へ、線路際へ出る三叉路にあった「池袋温泉」です。

 近くの名曲喫茶「白鳥」はよく利用しましたが、ここは前を通り過ぎるだけでしたので、当時の様子をご紹介できないのが残念です。

飲み屋斯々然々(かくかくしかじか) その12011/09/13 11:34

「たにし亭ありき」山口瞳・画

山口瞳水彩画「たにし亭ありき」


†最後のお見舞い 澤井ふささん

 今日この頃しばしば,いや、毎日のように「たにし亭」のことが思い出されてならない。

 私がそれだけ歳をとったということだろうか。三十数年前、それこそ毎日のように飲んでいた私が毎日のように通っていたお店だった。

 たにし亭主人、澤井ふささん。兄事していた飲み仲間の先輩と、介護施設にお見舞いに行ったのが、最後の別れとなってしまった。平成十六年二月十五日だった。

 部屋には作家山口瞳さんが晩年、閉店後のたにし亭を描いた水彩画が飾ってあり、おばさんのベットから、その絵は眺めることができた。

 おばさんは、もう僕らのことは分からなくなっていたようで、悲しかったが、昔のたにしの絵のそばで、幸せそうであった。

 それから三年後、おばさんは亡くなられたが、再度、お見舞いに行けなかったことは、世事に取り紛れていたとはいえ、今でもも悔やんでいる。おばさんは会いたい人に会えたであろうか、そのことだけが今でも少し気がかりである。

 たにし閉店後、おばさんはこの絵を自宅玄関に飾っていたので、遊びに行くたびにいつも眺めていた。ある時カメラを持っていたことがあり、おばさんにお願いをして、丁寧に複写しておいた。

 それが掲載の写真だが、原画はおばさんの死後、行方不明になったので、私の複写が後年、夫人の治子さんが瞳さんを追慕する「武蔵野写生帖」に活かすことができたのは、おばさんの大いなる配慮と思う。

 そのこともあって、たにし亭の常連だった友人の計らいで、治子夫人から掲載本をいただけたのは嬉しかった。

 しかし、旧たにし亭を描いた水彩画を見てびっくり。デジタル加工をした複写原稿を元にした印刷だったせいか、原画の持つ淡い黄味がかった色調は失われていた。

 あれ以来、気に病むことしきり、今回せめて、瞳先生の許せる範囲に復元を試みてみた。関係者の皆さんお許しを。

装幀に屈託あり(1) 俳句誌『春泥』2011/09/17 09:41

小村雪岱・表紙『春泥』

装幀家、挿絵画家として、小村雪岱はあまりにも有名である。確かにうまい。こちらを自分の世界に引き込んでしまう不思議な魅力がある。

邦枝完二の『おせん』がよく彼の代表作として紹介されるが、この久保田万太郎が主宰していた俳句誌『春泥』の表紙絵もまた素晴らしい。

古書業界では、かって雪岱ものはコレクターアイテムの一つだったと思うが、媒体が俳句誌なので、持っている人や見たことのある人も少ないと思う。ここでご紹介した次第である。


†「春泥」78号


 春泥社 俳句同人誌/久保田万太郎・主宰

 昭和12年1月5日発行

 変型版(220×150ミリ)・63頁 30銭


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シムノンっぽく、あるいはメグレっぽく(3)セトル・ジャンのお店2011/09/19 10:06

「メグレとワイン商」の原書

その昔、パリはレアル・旧中央市場にB.O.F.(ボン・ウブリエ・フランス)という一杯飲み屋があったという。周囲の再開発後も親爺セトル・ジャンは愛妻と二人で店を切り盛りしていた。

わが愛するシムノンも通っていた店だという。勿論私はこの店を知らない。しかし、池波正太郎先生のフランス話には再三でてくるので、私もいつのまにか馴染みのお店と錯覚するようになってしまった。

池波先生の著書に、シムノンがこの親爺のお店を彼の新作のカバー写真に使っていて、親爺セトル・ジャンから、いかにも自慢気にそれを見せられたとあった。

私も見たいし、欲しかった本である。それがこの本である。


†MAIGRET et le marchand de vin (メグレとワイン商)


   ジョルジュ・シムノン/著 1969年作品

   1971年第2四半期(4月〜6月) 初版発行

   PRESSES DE LA CITE版(106×178ミリ) 186頁 1981年印刷&刊行


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装幀に屈託あり(2) 柳澤 健『回想の巴里』2011/09/22 08:27

柳澤 健「回想の巴里」

画家としてばかりでなく、ブックワークの世界でも活躍した藤田嗣治画伯。その本の仕事の全貌が今年になって、林洋子さんという京都の大学の先生の手によってまとめられた。

新書ながら丹念に調べあげた入魂な仕事で、一読感服。そういえば確か仙花紙の嗣治の装幀本があったぞと、乱雑本棚をがさごそと…。

やっと出てきたと思ったら、扉の挿絵はどうか知らないが、表紙は明らかに戦前の文藝春秋(1940年10月号)に載せたイラストのリライトでした。

著者の自序によると、嗣治先生、旧友の装幀の依頼に『この種の注文は最近は一切断って、自分の仕事に精進をしているのだが、君の頼みじゃ…」と言って進んで引き受けてくれたとある。

が、しかし、二十年来の友人に、そんなに恩着せがましく言っておいて、一度描いた絵のなぞりを寄越すなんて!(私が腹を立てることじゃないけれど)。

こんなことが林先生のお仕事でわかってしまって、懇切丁寧が仇。何と言ったって、文春に載ったいた挿絵の方が、数段いいんですよ。


†回想の巴里


 柳澤 健/著

 酣燈社●昭和22年10月5日発行

 ●B6判・211頁 65円


†藤田嗣治 本のしごと


 林 洋子/著

 集英社新書ヴェジュアル版●2011年6月22日発行

 ●新書判(106ミリ×173ミリ)・253頁 1200円