こんな文庫・あんなカバー(3) 旅は青空2011/08/18 07:47

旅は青空

私は池波正太郎のいい読者ではありません。彼の表看板の時代物を一冊も読んだことがないからです。嵐寛寿郎の鞍馬天狗を最後に見た世代ですが、とんと大衆小説としての時代物とは縁がありませんでした。

そんな私を夢中にさせたのが、人気作家として長く活躍した池波正太郎の「旅もの」でした。いや、実にうまい。何度読み返しても、厭きない不思議な魅力に富んだ作品群でした。

先生はスケッチもお好きだったらしく、ご自身の絵を自著のカバーに何度も使っていますが、これもそのうちの一冊です。私も一度は行きたかったビストロが描かれていて、パリの良き時代を髣髴とさせる、私の好きな先生の絵です。

最後にあとがきの常盤新平氏のオマージュもまたいい。池正の「旅もの」の魅力を余すところなく伝える文章は流石、手練れの技。感服するより他はありません。一読をお薦めします。


†旅は青空 新潮文庫


 池波正太郎/著

 昭和62年3月25日 初版 発行

 A6判(105×148ミリ) 107頁 280円